
太陽光発電のメンテナンスは、ランニングコストの大部分を占める。投資の実質利回りに影響するため、メンテナンスについては真剣に考えておくべきだ。
太陽光発電は固定価格買取制度(FIT制度)で利益を得る投資だ。20年間、固定価格で電気を買い取られるのが最大のメリットだが、限られた期間中にどれだけ発電量を稼げるかが、投資を成功させる最大のポイントと言えるだろう。50kWの太陽光発電所が発電停止したときの損失は、晴天時で1日あたり約1万円とされる。メンテナンスは義務でもあるが、太陽光発電投資で儲けるための重要事項なのだ。
ここからは、利回りを増やすためのメンテナンス相場を解説していこう。低圧(10kW〜50kW)・高圧(50kW以上~2000kW)・特別高圧(2000kW以上)の太陽光発電に必要なメンテナンスと、かかる費用について紹介していこう。
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太陽光発電投資は「機会損失」を減らすことが最重要

メンテナンス費用の相場
低圧と高圧、特別高圧の太陽光発電システムにかかる1年間のメンテナンス費用は、以下の価格帯が目安である。
低圧(10kW〜50kW):10万円〜15万円 高圧(50kW以上2000kW未満)・特別高圧(2000kW以上):100万円~200万円/MW ※1000kW=1MW
高圧や特別高圧の太陽光発電費用は価格帯に幅が大きいため、上記はあくまで参考程度に考えてほしい。
2MW以上のメガソーラーは、年間200万円以上のメンテナンス費用がかかることになるだろう。メンテナンス費用は決して安くはないが、発電容量が大きければ大きいほど、小さな故障が大きな損失につながるため、定期メンテナンスは欠かせない。
メンテナンスを怠るとどうなる?
必要最低限のメンテナンスを怠ると、さまざまなリスクが生じる。ここでは、代表的なリスクとして3つを紹介する。
FIT認定の取り消し
2017年に施行された改正FIT法によって、メンテナンスの契約と実施が義務化されている。「適切に点検・保守を行い、発電量の維持に努めること」がFITの新認定条件としてガイドラインに追加されたのだ。
新設の太陽光発電システムに限らず、既設の設備についても同じ基準が適用される。このようにメンテナンスが義務化された背景には、不十分な設計施工やメンテナンスによるトラブルの増加があるだろう。
メンテナンスを怠っていると判断された場合には改善命令を受けたり、最悪のケースではFIT価格の認定が取り消されるおそれがある。FIT認定が取り消されてしまえば売電そのものができなくなってしまうため、定期点検は必須といえる。
発電効率の低下

適切なメンテナンスを行わないと、太陽光発電システムが劣化し、発電効率の低下につながる。
ソーラーパネルの耐用年数は20年以上とされているため、FIT期間が満了するまで使用できる。とはいえ、ソーラーパネルに汚れが付着すると発電量が低下してしまう可能性があるのだ。
ソーラーパネルの表面はガラス製のため、多少の汚れなら雨で自然に流れ落ちることも多いが、例外もある。
たとえば、花粉や黄砂、鳥の糞、道路や工場の排気ガスなど油を含む物質は、雨が降っても自然には落ちにくい汚れである。そのほか、ソーラーパネルの設置角度や風や雨の当たり方によっても、汚れが溜まりやすい。
このような汚れを放置すると少しずつ堆積していき、発電効率を下げてしまう。そのため、適宜、高圧洗浄機を使用して清掃しなければならない。太陽光パネルの洗浄費用は、50KW(パネル170枚)の場合、18万円程度である。
故障や事故のリスク

長期間にわたってメンテナンスをしていないと、発電効率が下がるだけではなく、蓄積した汚れや傷が原因となって故障や事故につながる場合があるため、要注意だ。
たとえば、カラスがソーラーパネルに石を落として故障させたケースや、カエルなどの小動物がパワーコンディショナに入り込んでパワコンを停止させてしまったケースがある。
ソーラーパネルに鳥の糞や落ち葉が付着して部分的に影を落とした状態が続くと、その部分が発熱してしまうことがある。この現象をホットスポットと呼ぶ。最悪の場合には発火してしまい、非常に危険だ。
ホットスポットを早期発見するには、非冷却赤外線サーモグラフィ搭載のハンディカメラなどを利用した予知保全検査を定期的に行うことだ。
ソーラーパネルの数が多い場合や、パネルが大きくて目視が難しい場合は、赤外線サーモグラフィ搭載カメラをドローンにつけて空撮する方法も有効だ。
定期的なメンテナンスをすれば、予期せぬシステムの不具合を早期に発見し、原因を取り除くことができる。
太陽光発電システムは自分でメンテナンス可能?

メンテナンス費用は決して安くないため、自分でメンテナンスができないかと考える人もいるだろう。しかし、太陽光パネルの清掃や草刈りを素人が行う場合には、注意をしないと太陽光発電システムの故障や発電効率が低下の原因を作ってしまうことがある。
個人でメンテナンスをする場合に多いトラブルの例を2つほど挙げてみよう。たとえば、草刈り機で除草する際に巻き込まれた小石がソーラーパネルに当たり、傷をつけてしまうケースがある。また、ソーラーパネルを清掃するときにパネルの上に乗って、その重みで小さなヒビ(マイクロクラック)が入ってしまうケースも珍しくない。
このように、セルフメンテナンスには、太陽光発電システムの故障や発電効率の低下を招きかねない。それを回避するには、やはり、専門業者にメンテナンスを依頼するほうが安心といえる。
太陽光発電投資は「機会損失」を減らすことが最重要
太陽光発電は、固定価格買取制度(FIT制度)で利益を得る投資だ。FIT制度は20年間、固定価格で電気を買い取ってもらえるのが最大のメリットだが、FIT期間が終わった後の売電価格は不透明である。
つまり、限られた期間中にどれだけ発電量を稼げるかが、太陽光発電投資を成功させる最大のポイントと言えるだろう。
ちなみに、50kWの太陽光発電所が発電停止したときの損失は、晴天時で1日あたり約1万円とされる。メンテナンスの実施は、太陽光発電投資で儲けるための重要事項なのだ。
ここからは、メンテナンスを実施しながら実質利回りを上げるための知識を解説していこう。
維持費とサービスに差がつくメンテナンス事業者の選び方
太陽光発電のメンテナンスは、発電所を設置する施工店か、太陽光発電に特化したメンテナンス事業者と契約できる。どちらと契約してもFIT法の定めるメンテナンス義務は果たせるが、両者は異なる特徴を持ち、サービスの質と料金に差がある。
料金 | 休日対応 | 長所・短所 | |
---|---|---|---|
施工店 | 安い (年間10万円前後〜) |
△ ※施工店による |
【長所】 設置者なので設備に詳しい 【短所】 施工時点のミスには気づきにくい。 施工店によっては休日非対応。 |
太陽光発電特化 メンテナンス業者 |
やや高い (年間10万円〜) |
◎ | 【長所】 施工時点のミスに気づきやすい。全国の実績とノウハウが蓄積されている。365日対応可能。 【短所】料金がやや高い。 |
メンテナンス料金が安いのは、施工店だ。太陽光発電の設置エリアから拠点が近いため、出張費用と人件費が安い。ただし、休日は対応外という施工店も存在する。日本の年間休日はおおむね120日なので、契約しても1年間のうち3分の1はメンテナンス対応をしてもらえないということだ。
太陽光発電のトラブルはいつ起こるかわからない上に、早期解決できなければ取り返しのつかない機会損失が生じる。施工店のメンテナンスサービスが比較的安いとはいえ、こうした事業者にメンテナンスを依頼するのは慎重になるべきだ。
一方、太陽光発電専用メンテナンス事業者は、料金が少し高くなる分サービスが厚い。施工店が見落としがちな、施工時点の瑕疵を見抜くセカンドオピニオンの役割も果たす。このセカンドオピニオンが最も効果を表すのは、太陽光発電所の引き渡し前だ。施工ミスが潜む物件を、万が一にでも掴まされないための用心として、一度は利用しておくべきだろう。

太陽光発電メンテナンス事業者では、以下の料金でスポット点検を依頼できる。
目視点検:年1回10万円 目視点検+電気点検:年1回11万円
ちなみに、高圧についてはメンテナンス費用について明記されていない場合が多いが、容量が大きい分、さらに高額になることが考えられる。
電気点検をすれば、施工時にダメージを受けた太陽光発電パネルや、初期不良のパワーコンディショナーの有無まで判別できる。万全を期すなら電気点検も付けておきたいところだが、用心のためであれば目視点検だけで十分だろう。発電量を大きく損なうようなリスクは、目視で分かることが多いのだ。
施工品質は、太陽光発電を売る時の査定額にも影響する。将来的に発電所の売却を望むなら、早めに第三者のメンテナンス事業者に診断を依頼するべきだ。
除草対策で最も低コストな方法と費用の目安

雑草の影響が最も大きいのは、春から夏にかけてのシーズンだ。日照時間が増え、売電収入が最も跳ね上がる時期でもある。草で太陽光が遮られたときの機会損失は大きく、投資をする上で絶対に見逃せないリスクだ。さらには、発電機器が草によって破損する可能性がある。草は危険なものと認識するべきだ。
既設太陽光発電にできる除草対策は、以下のものがある。
- 防草シートを敷く
- 草刈りをする
- 除草剤をまく
- 雑草の生育を邪魔する種子をまく
- ヒツジなど草食動物を放つ
上記の除草・防草対策にかかる費用の目安を以下にまとめた。なお、除草ヒツジは飼育に手間がかかる上、低圧太陽光発電ではコストが釣り合わないので除外する。
頻度 | 費用例 | 注意点 | |
---|---|---|---|
防草シート | 約10年に1回 | 674円〜/㎡ | 既設設備の場合、シートを隙間なく敷くのはほぼ不可能。防草シートの隙間から雑草が伸びるケースがある。 |
除草剤 | 年1〜数回 | 50円〜/㎡ | すでに伸びた草は刈る必要がある。使用場所や雑草の種類ごとに使うべき除草剤が異なる。 |
草刈り(自力で行う) | 年1〜数回 | 機材、燃料費、交通費など | 手間と労力がかかる。遠隔地の場合は難しい。飛び石、ケーブル切断など設備破損の恐れも。 |
草刈り(外注する) | 年1回〜数回 | 200円〜/㎡ | 刈った草(産業廃棄物)の処分は別料金のケースが多い。発電に支障がでる長さ(50cm以上)の草刈りは、料金が高くなるケースが多い。 |
クローバーなどの種子をまく | 1回〜数年おき | 120円〜/㎡ | 立地・土地の状態により効果が不安定。 |
除草の回数は、その土地に生える植物の種類や生育速度によって変わる。施工前に防草シートを敷くのが最も手軽だが、耐用年数や経年劣化があるため、効果は永続的ではないことに留意しよう。
草刈りは設備破損のリスクがあるため、素人に安価で依頼するとトラブルの素になる。自己責任で行うか、費用がかかってもプロに依頼するのが安全だ。
【低圧向け】遠隔監視システムの効果と費用

遠隔監視システムとは、太陽光発電の発電量を監視し、モニタリングする装置のことである。有名なのは、NTTスマイルエナジーのエコめがねだ。主な機能は2つある。
- 発電量の異常を監視する
- 発電量をリアルタイムに近い状態で閲覧する
メンテナンスにおいて有用なのは、前者の「発電量の異常を監視する機能」だ。発電量が急激に低下すると、メンテナンス事業者とオーナーに異常事態を知らせるアラートが飛ぶ。発電機器の確認と、早期対処を求めるための必須機能である。
10kW以上の太陽光発電は、1日でも発電が止まれば大きく損をする。遠隔監視システムを使わない場合、発電量の異常に気付けるのは、月に1度の検針日しかない。さらに、発電実績を投資家自身が検証し、異常が無いかを確認しなければならないのだ。
発電量は毎月一定ではないため、実際の発電量が異常かそうでないかを見分けるのは至難の技である。かかる手間も考えれば、自力で異常を検出するのは現実的ではない。
低圧の場合、遠隔監視システムの費用は大体30万~50万円程度が目安である。
【高圧・特別高圧向け】遠隔監視システムの特徴と費用

高圧監視においてシェア58%を誇るラプラスシステムは、高圧・特別高圧に対応した遠隔監視システム「L・eye(エルアイ)」シリーズを販売している。
「L・eye」は、パワコンと計測機器が直接通信するため、パワコンごとの発電量を測定できる。そのため、発電量の低下など故障や異常が発生しても即座に把握でき、機会損失リスクを下げることが可能だ。
「L・eye」における具体的な価格は明記されていないが、パワコンの台数に関わらず、発電所の容量によって価格が決定する。高圧や特別高圧の場合は、低圧の費用相場である30万~50万円よりも高額になる可能性が高い。
メンテナンス後に故障が発覚した場合の費用
メンテナンスをした後に故障が見つかった場合は、さらに、修理や部品交換費用が発生する。
メーカー保証期間内であれば、多くの場合はメーカーに無償で対処してもらうことが可能だ。ただし、どこが故障したかによっても、対処してもらえる内容や保証期間は異なる。
メーカーが定める水準の出力を下回った場合は、出力保証としてモジュールの修理や交換をしてもらえる。ただし、周辺機器は対象外だ。
システム機器保証の場合、パワーコンディショナなどの周辺機器を含めて保証の対象とされる。一般的に出力保証期間は10~20年間、システム機器保証は10年間だ。
まずは、保証内容を確認しよう。定期的にメンテナンスをしていれば、大規模な故障が発生する前に発見できる可能性が上がるほか、故障を未然に防ぐこともできる。
太陽光発電の保証メンテナンスと同時に日々の発電量監視も大切

太陽光発電システムは屋根の上など目につきにくい高所に設置されるため、故障した場合にもなかなか気づきにくいものだ。
定期的にセルフチェックを行うことで故障に早く気づき、これまで述べてきた機会損失を減らすことができる。セルフチェックで注目するべきは以下の2点だ。
- ソーラーパネルの外観
- 発電量
まず、月1回ほどソーラーパネルの外観を確認し、汚れていないか、飛来物による傷などが生じていないかをチェックしよう。
次に、毎月の発電量を確認することだ。天候や気温の変化が少ないにもかかわらず発電量が大幅に低下している場合は、故障を疑おう。
そして、何らかの異常を感じたら自分だけで判断せず、メンテナンス業者に連絡して点検をしてもらうことが大切だ。
太陽光発電のメンテナンスは、収入と資産価値を守るため

太陽光発電投資で利益を増やす原則は、20年間のFIT期間中、発電量を良好に保ち続けることだ。メンテナンス契約が高すぎれば利益を圧迫してしまい、安くてもサービス内容が不十分であれば大きな機会損失に繋がりかねない。
太陽光発電所は、毎月の売電収入の源であり、将来的に売却益も見込める「資産」である。高品質のメンテナンスを、リーズナブルに契約したいところである。
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