失敗しないソーラーシェアリングのファイナンス実例とは?の説明画像その1

国内での許可件数が1,000件を超えたとも言われるソーラーシェアリングですが、設備の導入に必要な事業費は野立ての太陽光発電設備と同様に金融機関からの借入などで調達する必要があります。

大規模なメガソーラーでは事業性のみを軸に資金調達を図るプロジェクトファイナンスや、低圧規模の案件であれば信販会社によるソーラーローンなど様々な選択肢があるわけですが、ソーラーシェアリングのファイナンス実例にはどんなものがあるのでしょうか?

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ソーラーシェアリングのファイナンスはなぜ難しい?

ソーラーシェアリング

ソーラーシェアリングは、一般的に金融機関からの融資を受けることが難しいと言われます。その理由として、ソーラーシェアリングを設置するためには市町村の農業委員会に申請して「農地の一時転用許可」を受けることになりますが、この許可の有効期間は3年間です。

ほとんどの場合、ソーラーシェアリングではFITを利用した20年間の売電事業計画を立てますので、この期間中に一時転用許可を6回更新することになります。そして、もしも一時転用許可の要件を満たさなくなり、この許可の更新が受けられなかった場合には発電設備の撤去が命じられる可能性もある のです。

野立ての場合であれば、こういった定期的な更新が必要となる許認可はほとんどありませんので、行政機関などから設備の撤去を命じられるリスクは低いです。このソーラーシェアリングに特有のリスクがあることから、金融機関はどうしても融資に対して消極的になると言われ、これがソーラーシェリングのファイナンスは難しいと言われる要因の一つになっています。

それでも融資を受けられるケースとしては、自分が持っている農地で、自分が営農しながら、発電設備も保有するという形であれば融資を受けられることはあるようです。これは、事業者自身が発電事業も農業もまとめて責任を負えるからです。

実際、2013年に農林水産省がソーラーシェアリングを認める通達を出した当初は農業者の方が自身で取り組む事例が多く、金融機関からの融資も受けられていました。また、発電事業者に十分な与信力があれば、コーポレートローンという形であれば融資を受けることも不可能ではなかったでしょう。ただ、一般的にソーラーシェアリングを設置する農地は担保価値がほとんどありませんから、他に担保を差し入れるなどしての融資調達になってしまうので、それを出来る事業者は限られてしまいます。

ソーラーシェアリングの仕組みとは?

ソーラーシェアリングの仕組み

ソーラーシェアリングの仕組みの根幹を成しているのが、「農地の一時転用」という取り扱いです。農地の用途を変更するためには農地転用という手続きを取り、例えばアパートや駐車場を建設します。この場合、農地転用された土地は農地ではなく宅地や雑種地といった扱いになり、土地の「地目」が変わります。また、その転用の効力に期限はありません。

一方で、ソーラーシェアリングのための一時転用の場合には、土地そのものは農地のままの扱いとなり、太陽光発電設備の支柱などが設置されている部分だけ、一時的な転用を行うという特別な扱いになります。そのため、ソーラーシェアリングでは支柱以外の部分でしっかりと農業を行っていくことになります。支柱を立てて太陽光発電設備をその上に設置しても、それは土地の一部だけで、しかも一時的なものという扱いなので「地目」も農地のままです。ただし、その転用が認められる期間には限りがあり、ソーラーシェアリングの場合には3年間となっています。そして、例えばFITが適用される20年という期間の発電事業を行っていくには、3年毎に一時転用許可を再取得することを繰り返すという形になるのです。

このように3年間という期限付きではありますが、一時的な転用であるという特別な扱いのため、通常は農業以外の用途とすることが認められない農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地でもソーラーシェアリングは設置可能です。

日本政策金融公庫は比較的前向き

ソーラーシェアリングのファイナンスに最も力を入れており、融資実績が多い金融機関は、日本政策金融公庫です。低圧規模の設備であれば、野立てと同様にソーラーシェアリングでも1,500~2,000万円程度の融資を受けた事例は多く、借入期間や金利も大きく変わらないようです。

特に、農業者の方が自らソーラーシェアリングに取り組む事例では、公庫からの融資を受けたという事例が2013年当初からあるようです。

地方銀行や信用金庫は?

地方銀行や信用金庫では、ソーラーシェアリングに対する融資を行った事例がまだまだ少ないのが現状です。こちらも、農業者の方が自らソーラーシェアリングに取り組む場合には、融資が受けられているケースがあるようです。

ただ、ソーラーシェアリングを含めた太陽光発電事業自体に慎重になってきている金融機関も多く、更に事業としてはハードルの高いソーラーシェアリングへの融資を受けるのは容易ではありません。

最も融資に積極的な金融機関は?

ソーラーシェアリングのファイナンスに関する事例を見ていくと、低圧からメガソーラーまで幅広い融資実績があるのは東京都の城南信用金庫です。

2017年4月には、千葉県匝瑳市で地元農業者を中心に立ち上げられたメガソーラーシェアリングプロジェクト(1,198kWp)に対して、城南信用金庫がプロジェクトファイナンスによる融資を行ったことが大きく報じられました。野立てのメガソーラーに対するプロジェクトファイナンスは数多ありますが、ソーラーシェアリングに対するプロジェクトファイナンスは国内初と言われています。

また、このプロジェクトは発電事業者としてSPCを設立し、地元農業法人がソーラーシェアリング設備の下で耕作を行うという形を取っており、そういった点でも特徴的なスキームになっています。

城南信用金庫の取り組みに触発されて、ソーラーシェアリングの融資に取り組む信用金庫は少しずつ増えてきているようです。

まだまだ事例が少ないソーラーシェアリングでは、ファイナンスの実例自体が少ないというのが現状です。その中でも積極的、前向きに融資している金融機関は確実に現れてきていますし、特にソーラーシェアリングの趣旨である「農業のための自然エネルギー事業」という点が明確な事業であり、営農に対する責任が明確であれば必要な融資を得られるはずです。

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