太陽光発電投資を検討している人は、どのくらいの利回りが見込めるのかを知りたいと考えているのではないだろうか。
高利回りをアピールしている販売業者もいるが、シミュレーションの結果が本当に正しいものなのか、疑問に思う人もいるかもしれない。投資で成功するなら、できるだけ正確なシミュレーションが必要といえる。
今回は、太陽光発電投資のシミュレーション方法について解説するので、ぜひ参考にしてほしい。
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収支シミュレーションに影響を与える代表的な要素
より正確にシミュレーションをするためには、計算結果に影響を及ぼす3つの要素を把握し、それぞれのデータを計算式に入力する。その要素とは「太陽光発電システムの発電量」「屋根の方角や傾斜」「設置する地域」の3つだ。
発電効率は太陽光パネルの素材によって異なるため、太陽光パネルの種類が違えば、同じ条件下でも発電量に差が出る。よって、太陽光パネルの種類(結晶シリコン、薄膜シリコン、化合物など)を正確に入力しなければならない。
屋根の傾斜や方角によっても、採光できる量が異なる。太陽と発電パネルが真正面に近くなるほど採光量は多い。
太陽軌道は南向きなので、太陽光発電設備も南側の屋根に設置するのが一般的だ。
しかし、正確な数値を出すためには実際の設置方角と傾斜を確認し、シミュレーションに反映させる必要がある。
加えて、日射量の違いも太陽光発電量の差となる。
日射量は地域によって異なるため、太陽光発電を設置するエリアをシミュレーションに正確に入力することが重要だ。
太陽光発電は日射量の違いによって差がある。地域によって日射量が異なるため、エリアを入力するときには正確に入力することによって、シミュレーションの精度を高めることができる。
販売業者のシミュレーションはあくまでも大まかな数字
太陽光発電に投資する前段階では販売業者に出してもらったシミュレーション結果を参考にする人が多いだろう。売電収入の収支シミュレーションには明確な基準が定められていないため、シミュレーションのしかたによっては実際の収支と異なるケースも出てくる点に注意が必要だ。
発電量は天候によって変動する要素であるにもかかわらず、天候が良く発電量が多かった年の数値をシミュレーションに使ったとしよう。すると、例年の実績よりも多い売電収入が結果として算出されてしまうのである。販売業者の中には、意図的にそのようなシミュレーションをするところもあるようだ。
シミュレーションのしかたによって結果の数値には誤差が生じることを頭に入れておこう。必ず、算出の根拠を確認する必要がある。
また、シミュレーションを行うときは初期費用にくわえて、メンテナンスやローンの金利といったランニングコストも含めることが大事である。
発電開始までにかかるイニシャルコストは?
初期費用にはシステム費用や工事費、太陽光発電設備を設置する土地の造成費、その他の費用が含まれる。
システム費用とは太陽光パネルやパワーコンディショナー、架台など、太陽光発電に必要となる機器の費用である。工事費とは、取り付け業者が太陽光発電機器を取り付ける作業の費用だ。
シミュレーションの算出に必要となるコストを把握しよう
太陽光発電の収支シミュレーションを行う場合、運営開始までにかかるコストだけでなく、開始後にかかるコストも含めて計算する必要がある。運営開始前と運営開始後で、それぞれどのような費用がかかるのかを解説する。
発電開始までにかかるイニシャルコストは?
初期費用にはシステム費用や工事費、太陽光発電設備を設置する土地の造成費、その他の費用が含まれる。
システム費用とは太陽光パネルやパワーコンディショナ、架台など、太陽光発電に必要となる機器の費用である。工事費とは、取り付け業者が太陽光発電機器を取り付ける作業の費用だ。
太陽光発電設備を新設する場合は土地の埋め立てやコンクリート基礎、フェンスの設置といった土地造成費がかかる場合がある。農地から転用するケースなどでは土地が平らでなく、そのままでは太陽光発電機器を設置できないためだ。
上記に加えて、物件の仲介手数料や補助金など各種申請の代行手続き、施工後のアフターフォローなどにも費用がかかる。
産業用太陽光発電のシステム費用、相場は?
産業用太陽光発電のシステム費用相場は設備規模により異なるが、2018年のデータによると平均kW単価は28.6万円となっている。
規模別の単価は以下の通りだ。
- 10kW以上50kW未満で28.7万円/kW
- 50kW以上500kW未満で25.5万円/kW
- 500kW以上1000kW未満で24.8万円/kW
- 1000kW以上で27.1 万円/kW
売電開始後のランニングコスト
パワーコンディショナは10年程度で消耗するため、交換費用として数十万円が必要となる。発電しない夜間にはパワーコンディショナの電気代が発生する。さらに、4年に1回以上行う定期点検にも約2万円の費用がかかり、保証期間終了後や保証対象外の故障に関する修理費用も必要だ。
その他にクリーニングや除草の費用、ローン金利、減価償却費、固定資産税などもかかってくる。資源エネルギー庁の資料によれば、10kW以上の太陽光発電設備にかかる年間ランニングコスト(運転維持費)は1kWあたり約5000円とされている。
売電収入はどのくらい得られるのか?計算方法を解説
1kWあたりの売電収入を求める計算式は「売電単価×発電量(kWh)」である。売電単価と発電量を正確な数値で計算することが重要だ。
売電単価は事業計画の認定を受けた年度の単価(2019年度は14円)とする。発電量の求める計算式は次の通りだ。
Ep(年間予想発電量)=H(年平均日射量)×K(損失係数)×P(システム容量)×365(年間の日数)÷1(標準状態の日射強度)
日射量についてはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「日射量データベース閲覧システム」で調べることができる。
もっと簡単に売電収入を計算する方法も紹介しよう。
東京都の予想発電量で試算
NEDOでは各地の年間予想発電量(1kWあたり)も公表しているため、その数値を参考にして売電収入を手軽に計算することができる。東京都で2019年度に50kWの太陽光発電設備を設置したとして計算してみよう。
14円(売電単価)×997kWh(東京都の1kWあたりの年間予想発電量)×50kW(システム容量)
1年間で69万7900円の売電収入と計算できる。ただし、このやり方では発電量の誤差やコストなどの細かい点が反映されないため、あくまでも目安と考えよう。
2019年度の買取価格で収支をシミュレーションしてみよう
ここでは、2019年度の固定買取価格である14円で太陽光発電投資を始めた場合、どのくらいの利回りが見込めるのか、シミュレーションしてみよう。年間予想発電量はNEDOが公表している数値、1kWあたりのランニングコストは資源エネルギー庁の資料に記載された中央値(5000円)を基準とする。
自己資金で購入した場合の想定利回り
ここでは、自己資金で太陽光発電の物件を購入した場合の想定利回りについて解説する。例として、下記の条件における想定利回りを計算してみよう。
- 初期投資:1194万円
- システム容量:72.80kW
- 場所:静岡県
- 年間予想発電量:1246kWh(1kWあたり)
まずは売電収入を計算する。14円(買取単価)×1246kWh(年間予想発電量)×72.80kW(システム容量)=126万9923円と求めることができた。
次に、年間のランニングコスト(年間の運転維持費)を計算する。5000円(1kWあたり)×72.80kW(システム容量)=36万4000円と計算できた。
年間収支は126万9923円-36万4000円=90万5923円となる。すると、年間の想定利回りは90万5923円÷1194万円(初期投資)×100=約7.59%という結果になった。
つまり、すべて自己資金で購入したケースでは、ランニングコストも考慮した実質的利回りが年間で約7.59%である。その場合、単純計算すると約13年間で投資費用を回収できることになる。
投資金額を回収した後も売電価格の変動がなければ、年間で約90万円の収入が期待できる。
融資を受けて購入した場合の想定利回り
ここでは、初期投資資金の調達手段が融資の場合を想定し、利息も含めて計算してみよう。条件は上記と同じとする。
- 初期投資:1194万円
- システム容量:72.80kW
- 場所:静岡県
- 年間予想発電量:1246kWh(1kWあたり)
- 年間支払利息:16万円(仮に金利2%とした場合の利息)
年間の売電収入は、14円(買取単価)×1246kWh(年間予想発電量)×72.80kW(システム容量)=126万9923円となる。
年間のランニングコストは、5000円(1kWあたり)×72.80kW(システム容量)+16万円=52万4000円と計算できた。 よって、年間収支は、126万9923円-52万4000円=74万5923円になることがわかる。
この場合、年間の想定利回りは74万5923円÷1194万円(初期投資)×100=約6.25%となる。
融資を受けて購入したケースでは、実質的利回りが年間で約6.25%だ。この場合は約16年間で投資費用を回収できると計算できる。そして、投資費用回収後には年間で約75万円の収入が見込める。
FIT価格(固定価格買取制度)が適用される場合は20年間、同じ価格で電力を買い取ってもらうことが可能である。あらゆるランニングコストを考慮し、投資リスクが少ないなかで利回りが高い太陽光発電は、安定した収入源になるということだ。
より正確なシミュレーションを行う方法
太陽光発電設備の販売業者は独自のシミュレーションデータやツールを持っており、より細かい条件設定のシミュレーションができる。
一方、購入に導く目的で意図的に日射量の多い年の実績を採用してシミュレーションし、結果を良く見せようとする業者もいる。悪質な業者に騙されないように注意したい。
発電量が想定よりも低ければ投資家に被害がおよぶからと、想定値を控えめに算出する事業者が多いなか、飛び抜けて発電量が多い案件があれば注意するべきだ。
より正確なシミュレーション結果を得るためには、シミュレーションの根拠を必ず開示してもらうことが重要といえる。自分自身でもNEDOが公表している気象データを使用してシミュレーションを行い、結果を確認するようにしよう。
シミュレーションを依頼する業者を選ぶときのポイント
シミュレーション結果と実際の発電量が大きくかけ離れていると、想定した利益を出せず赤字になってしまうおそれがある。
そのため、実際の発電量に近いシミュレーションを実施している業者を見極めて選ぶことが重要だ。信頼できる業者を選ぶ際のポイントを3つ紹介する。
- 過積載によるピークカット(発電損失)を考慮したシミュレーションを行っているかどうか
- パネルにかかる影(樹木や建物など)による発電損失を考慮したシミュレーションを行っているかどうか
- 極端に日照時間の良い年のみで発電量のシミュレーションが行われていないかどうか(気象庁が発表する日照時間の資料と照らし合わせれば確認が可能)
太陽光発電はほかの投資と比べて利回りが高い?
太陽光発電に投資する場合は設備にランニングコストがかかるため、実際の利回りが予想よりも少ないように感じることもあるかもしれない。投資を行うときには利回りだけに注目せず、どのようなリスクが存在するかについても考える必要がある。
では、太陽光発電投資とその他の投資について、利回りとリスクを比較してみよう。
投資対象 | 利回り | リスク |
---|---|---|
太陽光発電投資 | 中程度 | 20年間固定価格で売電できるため小さい |
不動産投資 | 中程度 | 空き室や家賃下落などのリスクがある |
株式投資 | 高い | 価格変動による元本割れのリスクがある |
投資信託 | 中程度 | 手数料や価格変動による元本割れのリスクがある |
国債 | 低い | リスクは小さいがインフレに弱い |
FX | 高い | 価格と為替変動によるリスクが高い |
仮想通貨 | 高い | 価格の乱高下によるリスクが高い |
太陽光発電投資の利回りは中程度であり、ほかの投資に比べて、特に低くも高くもない。しかし、利回りが中程度の不動産投資や投資信託と比較した場合、太陽光発電投資のリスクは小さいことはメリットといえる。
総合的にみれば、それなりのリターンをローリスクで得られる太陽光投資が投資として最も確実と考えてよいのではないだろうか。
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シミュレーションどおりに続くのか? 太陽光パネルの寿命について
太陽光発電設備のライフサイクルコストをシミュレーションする場合、メンテナンス費用やパワコンの交換費用も含めて計算する。
太陽光パネルが経年劣化によって寿命を迎えた場合は交換する必要が生じる。新しい太陽光パネルの購入と設置工事のコストが発生することを知っておこう。
太陽光パネルに期待できる耐用年数は、資源エネルギー庁によれば約25~30年とされている。
そして、ここまでの計算では初期費用は約13年間の運用で回収できる。よって、太陽光設備を一度設置すれば、太陽光パネルが寿命を迎えるまでの10年間以上は収益をあげられる計算になるのだ。
今後の売電価格の動向
FITの売電単価は、よほどのことが無い限り、20年間の売電期間中に引き下げられたり、取り下げられることはない。
太陽光発電の投資において、いつFIT認定を得ているか、売電単価がいくらであるかは大事なポイントだ。
固定買取制度が定める太陽光発電の売電単価は、2012年から2019年の間に大きく変動している。
2012年に開始された固定価格買取制度(FIT)は、下表のように年々下落している。
【固定買取価格の推移】
2017年 | 21円(10kW以上2000kW未満) ※2000kW以上は入札 |
---|---|
2018年 | 18円(10kW以上2000kW未満) ※2000kW以上は入札 |
2019年 | 14円(10kW以上500kW未満) ※500kW以上は入札 |
2020年 | 13円(10kW以上50kW未満) 12円(50kW以上250kW未満) ※250kW以上は入札 |
買取価格は下落しているものの、FIT開始時に比べて太陽光発電システムの費用も下がっている。パネルの発電効率が向上し、安く改善されていることで利回りは平均10%前後を維持している。つまり、FITが下落した太陽光発電が必ずしも損ではないのだ。
太陽光発電のFITが使えなくなる案件
FITは太陽光発電事業者を増やし、日本の発電事情に大きな影響をもたらした。役目を果たした売電制度は、一定の事業規模において、近いうちに廃止される方針だ。
2020年春ごろを目処に、一定条件を満たす新規事業用太陽光発電について、FIT制度の対象外にするというのだ。
誰でも参入できる投資用太陽光発電において、FITは重要なポイントである。これからFITが使えなくなる案件を確認しておこう。
FITが使える太陽光発電・FITを使えない太陽光発電
- 法改正以前にFIT認定を取得した案件(低圧・高圧) → 20年間売電可能
- 法改正以降の新規案件 50kW未満(低圧)全量売電 → 不可
- 法改正以降の新規案件 50kW〜250kW未満(高圧)全量売電 → 可 ※12円+税
- 250kW以上(高圧・特別高圧)→ 入札制度
設備費用の安さで人気だった50kW未満の投資用太陽光発電は、法改正以降は入札かFIP(フィードインプレミアム制度)で売電単価が決まる方針だ。
50kW〜250kWの高圧太陽光発電でFITが使えることは幸いである。高圧は、トータルコストは高く見えるが1kWあたりのコストが安いからだ。
しかし、大規模な発電設備を設置する土地の入手に、骨が折れることだろう。この場合、土地と発電システム一式がセットになった土地付き太陽光発電がおすすめだ。
FITが使える50kW未満全量売電をこれから入手する方法
FITが廃止される前に申請して認定を受けておけば、そこから20年間はFITの価格での売電が可能である。
- すでに認定を取得し、これから稼働する新設の太陽光発電
- すでに認定を取得し、稼働している中古の太陽光発電
これら2つの投資物件は、今からでも20年間のFITが使えるということだ。
さらに、FIT価格での売電資格を持つ物件は需要があるが、今後は手に入らなくなる。プレミアがつくことで、売却時の価値が高まる可能性も見込める。
太陽光投資を検討中であれば、早い行動をおすすめする。
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売電価格が下がっても儲けを出す方法
売電価格が下落する中で利益を出していくには、3つの方法がある。
①発電効率が高い立地の場所を探して設置する
場所によって異なる日射量や日照時間が発電量に大きく影響する。そのため、設置候補地について、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の日射量データベースで確認することをおすすめする。
完璧な立地はすでに埋まっていると思われがちだが、土地の事情により取りこぼされていた「掘り出し物」もなくはない。
余暇時間で探すのは難しくとも、土地と発電システムをパッケージ化した土地付き太陽光発電では続々と新規案件が発掘されている。
利回りなどを見ながら検討していこう。
②太陽光パネルの過積載をして発電量を増やす
過積載とは、パワーコンディショナーの容量を超える太陽光パネルを設置することである。太陽光による発電機会を最大限に活用することで、設備を効率的に稼働できるのだ。
パネルの設置枚数は増えるが、一枚あたりの単価が下がったために採算が取れる。太陽光発電では常識的に行われている方法だ。
③固定価格買取制度の権利を持つ中古物件を購入する
中古物件はすでに稼働した実績により、実際の売電収入を確認できて事業リスクが小さいというメリットがある。工事期間が不要で、購入してからすぐに利益を出すことが可能だ。
シミュレーション重視の太陽光投資はタイナビ発電所
太陽光発電投資の収支シミュレーションをする場合、初期投資だけでなくランニングコストも考慮する必要がある。この記事で紹介した計算方法を使用して、どのくらいの利回りが見込めるのか、自分で計算してみるとよいだろう。
正確な数値を求めるシミュレーションを素人が行うのは難しいため、信頼できる業者に問い合わせてみることも大切だ。さらには、実績のある中古発電所を狙うのも良いだろう。タイナビ発電所では、厳選された優良企業や中古物件にアクセスできるので、ぜひ利用してほしい。
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