ドイツの例から見る 日本再エネの展望

日本の太陽光発電投資には、発電した電力を一定期間固定価格で売ることができる、固定価格買取制度(FIT)が欠かせない。一方、太陽光発電の先進国であるドイツも、かつてはFITで太陽光発電の数を大きく増やしていた。

しかし、ドイツはすでにFITを原則廃止するに至った。この衝撃は大きく、「ドイツのFITの失敗」とも言われ、同じようにFITを用いる日本の太陽光発電の将来が不安視される要因になっている。

ここでは、ドイツがFITからFIPに移行した理由を振り返り、日本のFITに関する今後の展望のヒントを探していこう。

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ドイツのFIPとは? FITとの違い

FIPとは、「Feed-in Premium(フィード・イン・プレミアム)」の略称である。FIPは再生可能エネルギーの電気を卸電力市場で取引し、卸市場価格にプレミアムを上乗せする方式だ。

FIPは電力の市場競争に市場競争の促進と制度の維持にかかる費用がFITよりも低い。

FITというのは「Feed-in Tariff(フィード・イン・タリフ)」の略称で、日本では「固定価格買取制度」を指す。FITが導入される一般的な理由は、電気の買取価格を固定することで初期投資の回収にかかる年月などの見通しを立てやすくし、再生可能エネルギー発電の普及を図ることにある。

つまり、FITは固定期間・固定価格で売電できることで、新しい市場だった太陽光発電など再エネ発電投資の保護と普及拡大に効果的であった。FIPは再生可能エネルギーを電力の市場競争に参加させることで、事業としての自立性と競争力の向上が期待される。

FIPにはいくつかの方式があるが、ドイツが採用したのはプレミアム変動型FIPだ。中でも、売電価格に下限を設定し、売電価格と卸電力価格の差額をプレミアムで補填する方式である。FIPの中でも特にシンプルで、運用しやすいのが特徴だ。

https://drive.google.com/open?id=1yRxFZ3ub_3Y8k1bOdZKx0gCdST3378Tk

メリットは2つある。

  • 最低売電価格が決まっているため、事業予見性がFITと同様に高い
  • 卸電力価格が高騰すると発電事業者の収益性が上がる

その反面、デメリットもある。再生可能エネルギー電気の売電価格に上限がないため、卸電力価格の高騰時に電力消費者の負担が大きくなる可能性があることだ。発電事業者にとっては投資インセンティブとして働くが、電気料金の消費者負担がFIT以上に大きくなるリスクとなる。

2016年以降、ドイツの100kW以上の再生可能エネルギー発電はFIPへ移行した。100kW以下設備にはFITが使えるが、大規模設備は市場競争の中に放たれた。

FIPにおいて、再生可能エネルギー発電事業者は収益性を高めるための努力に迫られる。例えば蓄電や需給調整などの技術を取り入れて、太陽光発電や風力発電による電力供給の極端な偏りを分散させることが考えられるだろう。

ドイツがFIPに乗り換えたいきさつ

ドイツで再生可能エネルギー買取制度が始まったのは、1991年のことだ。この時は買取価格が家庭用の電気料金に連動するもので事業としての魅力に欠け、再生可能エネルギー発電の大きな普及効果はなかった。

このような背景を受けてFITが導入されたのは2000年。再生可能エネルギー法によって、電力会社に対して固定価格での20年間の買取が義務づけられた。これによって事業としての安定性が増した。

2004年の法改正によって買取価格が値上がりし、脱原発の動きが更なる後押しとなり、再生可能エネルギー発電の普及は急速に拡大した。その一方でFITを支える「賦課金」が増大し、国民の電気料金負担が重くなったことから、不満が徐々に高まった。

ついに2014年、FIPが導入された。500kWの新設設備にFIPが義務化され、FITは原則廃止に至ったのである。その後も入札制度の導入、FIPの義務化範囲を100kW以上に広げるなど、再生可能エネルギーの経済性を高める施策が続いている。

FITにおける日本とドイツの違いと共通点

日本のFITとドイツのFITには共通点もあり、違いもある。

ドイツでは様々な問題点も浮上したFITであるが、日本におけるFITの状況はどうであろうか。今後、日本でドイツと同じような問題が生じるのかどうかを考える上で、比較してみることは重要である。ここからは、日本とドイツのFITの違いと共通点について解説する。

日本とドイツの違い

圧倒的に異なる点は、両国における再生可能エネルギーの導入率である。

ドイツでの再生可能エネルギー発電比率は27.6%なのに対して、日本は14.6%と、およそ半分程度しか導入が進んでいない。また、ドイツに限らず他の諸外国と比べても、日本において再生可能エネルギーの導入率は決して高くない。これは、導入にかかるコストが日本ではまだまだ高いということが、要因の1つとなっている。

日本とドイツの共通点【賦課金】

日本とドイツのFITには共通点もある。それは、一般家庭の電気料金に、何らかの形で費用が上乗せされるということである。

FITにおいては、電力会社が再生可能エネルギー電力を買い取るための費用の一部が「再生可能エネルギー賦課金」として電気料金に上乗せされる。再生可能エネルギー発電が増えるほど、国民全員の負担が増える仕組みなのだ。

ドイツにおける賦課金(サーチャージ)は、2015年時点で一般家庭の負担額が年間3万円近くにまで及んでいる。同年の日本における再エネ賦課金の負担額は、年間で約6000円だ。

入札制やFIP移行に切り替えたドイツであるが、賦課金は上昇傾向にある。2017年には、総額239億8000万ユーロの賦課金が電気料金に上乗せされるという。既存設備がFIT期間を終えるまで、賦課金が急減少する可能性は少ないだろう。

日本もFITからFIPに乗り換えるか?

ドイツのFITの状況を踏まえて日本のFITの今後を考えてみると、日本もFITからFIPに移行する可能性は決して低くはない。

なぜならば、日本のFITでは売電価格が年々下がり続けており、発電事業者が充分な売電収入を得ることは難しくなってきつつあるからである。FIT期間終了後の売電価格は11円/kWhにまで下がるとも言われているが、そうなると売電するよりも自家消費した方が得になる。

しかし、仮にFITからFIPに移行したとすると、売電の自由化が進むことが予測される。発電事業者はこれまでよりも安い値段で売電する可能性も出てくるのである。

日本の太陽光発電は、現行のFITで設備費用と撤去費用、そして利潤を確保できるようになっている。FITの価格は年々値下がりはしているものの、その価格は設備費用など各要素と、システム費の下落を加味して決定しているからである。

2020年に脱FITの流れ、今後の展望は

産業用太陽光発電の20年間におよぶFIT期間が終わった後、現状は電力の売電については定かではない。しかし、FIT法の抜本見直しは2020年度末までに行うと、法律で定められている。

見直しの方向性としては、FIT制度の自立化が濃厚だ。ドイツに倣えば、大規模再エネ設備から入札制、卸電力市場への販売などの手段を組み合わせ、脱FITへと向かうだろう。日本の2MW以上太陽光発電はすでに入札制に移行しているが、投資用太陽光発電に多い50kW未満設備がどう扱われるかに注目だ。

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