VPPの基本

電力の世界にもバーチャル世界が登場していることをご存知だろうか。

VPPと呼ばれるシステムを利用することで、FIT期間終了後においても太陽光発電が売電を継続できる可能性が広がっている。

今回はこのVPPについて基礎的な知識とメリットをご紹介する。

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VPP(バーチャルパワープラント:仮想発電所)とは?

VPPとは、バーチャルパワープラントの略称であり、日本語では仮想発電所と呼ばれている。このVPPは、なぜ仮想発電所と呼ばれているのか。それは、VPPが一般家庭やオフィス、工場などに存在する小さな発電システムをまとめて統合制御するシステムであり、これによりあかたも一つの発電所かのように機能し、大規模な発電所に匹敵する電力を作り出すからである。

下記の図は、このVPPの概要と意義について解説した動画である。

出典:経済産業省(2018年)『metichannel』 バーチャルパワープラント

VPPの仕組み

電気はその性質上、貯蔵することが不可能である。このため、電気は常に需要と供給のバランスを保たなければならない。万が一バランスが崩れれば、停電などのトラブルに発展する可能性も秘めている。これまで、このバランスを保つ役割は、主に大型発電機によって担われてきた。

しかし、IoT(M2M)の活用や送電網の整備などによって、住宅や工場の太陽光発電設備など、分散する小規模なエネルギーリソースを統合制御することが可能になった。

一つ一つの小さい発電機を統合し、電力の供給量を制御するのは、あたかも大きな発電所を保有しているかのようだ。VPPには、需給バランスを保つ役割に活用されることが期待されている。

VPPに加わるメリットと方法

VPPは、小規模な発電システムや蓄電システムを集合させて運用するものである。太陽光発電などのエネルギーリソースを提供する対価に、メリットが得られる可能性は充分にあると考えられる。

VPPが実証段階である現在は、法人の電力消費者を対象とした「ネガワット取引」が行われている。ネガワット取引とは、節電して減らした消費電力量を「電力を生み出した」ものとして見なし、インセンティブをもたらすものだ。

将来的にVPPが実用化されたとき、エネルギーリソースを提供すると、ネガワット取引と同様に報酬が得られるようになるだろう。

VPPには、アグリゲーターと契約することで参加できる。アグリゲーターとは、電力会社と、工場やオフィス、一般家庭などの分散するエネルギーリソースをマッチングさせる存在だ。

リソースアグリゲーターとアグリゲーションコーディネーターに分けられる。前者は、VPPサービス契約を需要家と結び、リソースの制御を実施する事業者である。

後者は、リソースアグリゲーターによって制御された電力量をまとめて、直接、一般送配電事業者や小売電気事業者と取り引きを実施する事業者である。

太陽光発電はVPPにより、FIT期間終了後もアグリゲーターを介して売電を継続できる可能性が広がっていると言えるだろう。

VPPのエネルギーリソース

VPPが利用するエネルギーリソースは、太陽光発電のほかに存在する。

太陽光発電の他、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(エネファーム)やヒートポンプ式電気給湯器(エコキュート)、電気自動車などもVPPのエネルギーリソースの例として挙げられる。

ごく身近に存在するものが、VPPのエネルギーリソースとして利用される。

VPPで起こる、創エネ・畜エネ・省エネの高効率化

創エネ・省エネ・蓄エネ

VPPを活用することで「創エネ」「蓄エネ」「省エネ」を高効率化できることは、VPPのメリットといえるだろう。

VPPにおける「創エネ」とは、分散型電源のことである。VPPでは、一つの発電所に頼らず、複数の発電施設を用いて電力を得ることを狙う。これにより、これまでの集中型電源と違い、柔軟性のあるエネルギー受給構造が可能になると期待されている。

次に、「畜エネ」だ。電力は蓄電池などに貯められるが、容量が大きくなると大変な額になる。そして、蓄電池の容量をフルに活用する場面が少なければ、過剰な設備を持て余してしまうのだ。

VPPは、分散した小規模な蓄電池をまとめて制御できるようになる。過剰な設備費用を防ぎつつ、大きな蓄電機能を持つことができるということだ。

最後に、「省エネ」である。電力がひっ迫する時間帯に節電を行うことで、電力需要サイドが電力供給バランスを調整するディマンドリスポンスなどが、すでに存在している。

エネルギーの受給が効率良くなると、電力会社側の需給調整コストが低減される。電気料金に反映されれば値下げされる可能性があるなど、消費者への直接的なメリットが生まれる可能性もあるのだ。

政府によるVPP構築実証事業が開始

VPPについては、政府による支援が行われている。

経済産業省では2016年から2020年までの5年間において、VPP構築実証事業を開始し、補助金を交付している。こうした政府の後押しを背景として、発電所の一部となる各家庭や企業の参加拡大や、電力の調整などビジネスモデルの検討が行われている。

このように現在VPPに関する取り組みが活性化していることには、東日本大震災以降、再生可能エネルギーへの期待が高まっていることもその一因をとして挙げられる。

また、日本では、国のCO2削減目標として、2030年度に2013年度比マイナス26.0%の水準にすることが掲げられた。この目標を達成する手段として、再生可能エネルギーを効率的に使うVPPが注目されている。

VPPを活用したビジネスも既にスタートしている

VPPによるビジネスは既に始まっている。その一例となるのが「ネガワット取引」だ。

このネガワット取引は、インセンティブ型の下げDRである。DR(ディマンドリスポンス)とは、需要家サイドが保有するエネルギーリソースを制御し、電力の需要パターンを変化させることを指す。このDRは二つに区分される。需要を減らす場合は「下げDR」と呼ばれ、需要を増やす場合は「上げDR」と呼ばれる。

「ネガワット取引」では、事前に行ったアグリゲーターとの契約に基づき、電気需要がひっ迫するタイミングで節電(下げDR)を実施することで、インセンティブを受け取ることが可能となる。

VPPで期待される太陽光発電

世界的にエネルギー問題が深刻である中、太陽光発電の導入量を増やすように各国が努力している。日本でVPPが発展することは、太陽光発電の発電量の不安定さを吸収し、導入量が増やせることを意味する。

また、VPPによって、FIT期間終了後も太陽光発電で収益を得られる可能性が高まってきた。太陽光発電投資の将来にとって、明るいニュースになるだろう。

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