不動産投資詐欺

不動産投資を考えるとき、忘れてはならないのが「不動産投資詐欺」のリスクです。

不動産は購入費用が高額になりがちな上、よい物件を探すには専門知識も必要です。そのため、悪徳業者の甘い言葉で安易に手を出してしまうと大切なお金を騙しとられる危険性があります。

取り返しがつかない事態を招かないためにも、自分の財産を守れるようにしておくことが大切です。ここでは、不動産投資詐欺から身を守るために、よくある手口と注意するべき一言を覚えておきましょう。

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詐欺に警戒! セリフ1:人に取られる前に手付金を

不動産投資の詐欺対策

不動産投資に興味を持ったA氏は、ある不動産業者から投資用の物件を紹介されました。

「他にも検討している人がいるから早めに手付金を払ってキープしておいたほうがいいですよ」と業者にすすめられて手付金を支払ったところ、あとになってそこまで条件のよい物件ではないという事実が発覚しました。

慌ててA氏は契約を取り消そうとしましたが、業者に「契約違反となるので、手付金は返金できません」と言われてしまいました。言葉巧みに投資家に手付金の支払いを急がせ、その手付金を騙し取ろうとする手口です。

このケースの問題点と対策

このケースの問題点は、契約内容を理解しないまま契約してしまったこと、さらに手付金を払う意味について理解していなかったことにあります。

手付金は物件をキープするためではなく、あくまでも契約を前提として支払うお金です。購入者の都合でキャンセルする場合、ペナルティとして手付金が返金されない可能性があります。

また、売り主が契約の履行に着手した場合には、たとえ手付金を放棄しても契約の解除はできません。手付金の持つ意味を理解し、安易に手付金を払わないように注意したいものです。

その他、手付金関連の詐欺には「あとで契約や物件に問題が発覚しても手付金を放棄できずに購入せざるを得なくなる」といった手口に加え、「入金後にブローカーに連絡がつかなくなり、支払った手付金を持ち逃げされる」といったものもあります。

不動産投資で注目されがちなのは物件の価値ですが、取引相手の質もしっかり調査しなければならないのです。

詐欺に警戒! セリフ2:満室の今がチャンスです

不動産投資の詐欺対策

投資用物件を探していたB氏は、ある業者の「今なら満室なのでチャンスです」という言葉を信じて投資用のアパートを購入しました。「満室ならしばらくは家賃が満額で入ってくる」と安心していたところ、契約を済ませた途端に大量の退去者が出て、空室だらけになってしまいました。

後日、実際にはその物件は満室ではなく、詐欺師の関係者が入居して満室を装っていたという事実が発覚しました。業者に騙され、入居率の低い物件を掴まされてしまったケースです。

このケースの問題点と対策

このケースの問題点は、実際の調査を怠り、「満室です」という業者の言葉だけを信じて契約してしまった点にあります。

不動産投資で家賃収入を上げるためには、実際の入居率をできる限り正確に知った上で物件を購入することが大切です。投資用の不動産を購入するときは、地域の情報を可能な限り調査し、周辺地域の空室率を確認してみましょう。

空室率の調べかた

およその空室率については、市町村名と空室率でネット検索をかけたり、現地調査を行い同ランクの物件の様子を偵察するといった方法で調べることができます。

実際に地元の不動産業者のところに行って、周辺の物件の入居状況を訊いてみるのも手です。現在募集中の物件で何室くらい空室があるのか、同じタイプの物件で過去にどれくらい空室があったのか、といった点を質問することで、周辺地域の入居率を探ることができます。

平均的な入居期間や空室期間についても尋ねて、不自然に同時期に入居者が増えていないかなどの点をチェックすることも大切です。

特定の需要が支える物件は、他者の事情に左右される

さらに、学生向けの物件や特定の企業の人が多く住んでいる物件では、大学や企業の情報も欠かさずにチェックしておきましょう。大学や企業の撤退・移転は賃貸需要が低下する大きな要因となります。

すでに近隣の大学や大きな工場の閉鎖・移転が決まっている場合、近いうちに退去者が大量に出るということもありえます。

詐欺に警戒! セリフ3:将来値上がりしますから

不動産投資の詐欺対策

C氏は、「再開発の計画があるので、今のうちに物件を買っておけば将来的に資産価値が上がります」と言う業者の話を信じ、すすめられた投資用物件を購入しました。しかし、実際にはそのような再開発計画は存在せず、C氏が物件を購入した後、物件の価格は大幅に値下がりしてしまいました。

「将来確実に値上がりします」あるいは「人気のエリアになるから空室の心配がありません」と言葉巧みに購入者を騙して、物件を買わせる手口です。

このケースの問題点と対策

駅や高速道路ができる、再開発エリアになっているなど、大規模工事で地価が上がるという話を持ちかけてくるケースが多くあります。

この手口の詐欺に引っかからないためには、とにかく情報収集を怠らないことが重要です。確実に儲かる好条件の物件というのはそうそうあるものではありません。うまい話を聞いてもすぐには信じないで、まずはそれが事実かどうか確認する必要があります。

「完成予定は何年後になりますか?」あるいは「どこからどこへ鉄道や道路が通りますか?」など、具体的にどのような計画があるのか必ず確認しておきましょう。セールスマン以外の情報源を当たり、情報の裏を取ることも必要です。

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詐欺に警戒! セリフ4:不動産投資は節税対策になります

不動産投資は節税対策になる

収入も会社での地位も安定していたD氏は、「不動産投資は節税対策になりますよ」と言われて不動産投資を決断しました。実際のところは、不動産投資で赤字が出ていた間こそ節税になったものの、黒字になってくると利益の分に税金が発生し、節税にはならなかったのです。

このセリフは「所得税が高いので節税できないか」と考えていることの多い高所得者をねらうものといえます。まるで、不動産投資自体が節税になる投資法であるかのように思い込ませる話法を用いて投資物件を販売するケースです。

このケースの問題点と対策

不動産投資の場合、赤字にならなければ節税になりません。また、損失を出してまで節税対策をするのは本末転倒です。要するに、節税対策になる物件とは利益が見込めない物件といえます。

例外として、不動産投資で節税できるケースも全くないわけではありません。たとえば、相続前に現金を不動産投資物件に換えることによって相続税を軽減できる場合です。

法人化でさらに節税できるという話にも注意

または、法人化して宿泊費や飲食費を経費にし、節税するというやり方もあります。家賃収入と給与の合計が1,300万円を超えている場合は、法人化によって7%~17%程度の節税が可能です。ただし、家賃収入が500万円以下の場合、法人の維持にかかるコストのほうが高くつくこともあります。

不動産投資が節税になるかはケースバイケースです。業者の言うことだけを盲信せず、自分の状況ではどのくらいの節税効果があるのか、契約する前にシミュレーションしてみる必要があります。

不動産投資で詐欺に遭わないための3つのチェックポイント

チェックポイント

不動産投資で騙されないためにも、購入者側には常に慎重な行動が求められます。そこで、この段落では、契約前に必ず確認しておくべき3つのチェックポイントを紹介します。

登記書類は自分でも必ず確認しましょう

詐欺に使われる物件は、架空の物件だけとは限りません。実在している物件をあたかも実際の所有者であるかのように装い紹介してくるケースもあります。投資対象の物件は必ず自分の目で確認し、さらに土地の登記簿などの登記書類についてもきちんと確認するようにしましょう。

クーリングオフ制度について正しく理解しておきましょう

不動産の売買契約においてクーリングオフ制度の適用を受けるためには、「宅建業者であること」および「申込みや契約が、業者の事務所等以外の場所においてなされた場合」という2つの条件を満たす必要があります。

ただし、購入者が自ら申し出て、買主の自宅または勤務場所で契約に関する説明を受ける場合にはクーリングオフの適用対象外となります。

不動産取引でクーリングオフ制度が使える場面は限られているため、「万が一の場合はクーリングオフすればいい」と安易に考えないようにしましょう。

宅地建物取引業者の登録番号を確認しましょう

まともな不動産業者であれば必ず「宅地建物取引業者」の登録をしており、店内の目につく場所に登録番号が掲示されていることが多いです。もし店内に登録番号の掲示がなければ、万が一に備えて悪徳業者である可能性も考えたほうが良いでしょう。

また、たとえ番号があったとしても、交付日が古い場合には注意が必要です。更新時の審査で不合格となり、登録を取り消されている可能性があります。

「もしかしたら詐欺かも」と思ったときの相談先

不動産相談先

不審な不動産投資の話を持ちかけられた場合は、自分ひとりで判断せず、専門的な知識経験を持つ人に相談することが大切です。ここでは、「詐欺かもしれない」と思ったときの相談先を4つ紹介します。

消費生活センター

消費者センターは、詐欺被害に遭ったときや遭いそうなときに相談できる場所として最も身近な存在です。消費者の利益を保護する目的で都道府県や市区町村など地方自治体に窓口が設けられており、公正な立場から、さまざまなトラブルの相談に乗ってくれます。

最寄りの消費生活センターを知りたいときは、全国共通の消費者ホットライン「188」に電話すれば教えてもらえます。または「独立行政法人国民生活センター」ホームページで調べることが可能です。

免許行政庁

宅地建物取引業法により、不動産取引における強引な勧誘は禁じられています。契約するように迫られたり、電話で執拗に勧誘されたりした場合は、免許行政庁への通報も可能です。悪質とみなされる不動産業者には、営業停止や免許取り消しを含む処分が下されるケースもあります。

宅地建物取引業保証協会

不動産業者の多くは「公益社団法人不動産保証協会」、もしくは、「公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会」のいずれかに所属しています。両協会は不動産取引に関わる苦情や相談に対応しており、解決に至らない場合は債権の1案件につき1,000万円を上限として弁済してもらうことが可能です。

実際に不動産投資詐欺に遭ってしまい、債権がある場合は、不動産業者が所属している保証協会に相談してみるとよいでしょう。

弁護士

不動産取引は高額のため、売買や契約に関するトラブルが発生することも珍しくありません。しかし、専門知識を持つ不動産業者を相手に闘おうとしても、一般の人は押し切られてしまうおそれがあります。

そこで、弁護士を代理人にすることにより、本気で争議する意思を表明する方法が有効です。契約解除を希望する場合なども、弁護士は法的に中立な立場から、こちらの主張を相手に伝えてくれます。

いきなり弁護士に相談することに抵抗を感じる場合は、法テラスを利用してみるとよいでしょう。法テラスでは法的トラブルについて気軽に相談できます。

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不動産投資初心者がやってはいけないこと

注意点

ここでは、詐欺に遭わないために不動産投資初心者がやってはいけないことについて、主な2点を紹介します。

その場で即決

会社に営業電話がかかってきた場合など、強く断れないまま、不動産投資を始めてしまった人もいます。

しっかりと利益を出せる好物件であればまだしも、営業してくる物件というのは概して、なかなか売れない物件であるケースが多いのです。「売り手がつかない=人気のない物件」といってよいでしょう。人気の物件であれば営業電話をかけるまでもなく、アンテナを張っている投資家に購入されているはずです。

年収が高い人は不動産投資のローン審査にも通りやすいため、営業電話がよくかかってきます。投資初心者に高い物件を売りつける詐欺の手口があるため、営業電話には十分に注意してください。

魅力的な物件に思える場合でも即決は避け、時間を置いて冷静になってから信頼できる人に相談するなど、念には念を入れて購入するようにしましょう。

目先の利益だけで投資を決める

不動産会社が提示する利回りは、表面利回り(年間収入を単純に投資金額で割った金額)であるケースがほとんどです。悪質な業者の場合は満室を想定した利回りを出している場合もあるため、くれぐれも注意しなければなりません。

不動産投資の利回りを計算する場合は、ランニングコストやローン返済、税金など、経費も含めた実質利回りを出す必要があります。表面利回りだけを見て投資を始めると、実際には予想よりも利益を出せずに赤字になってしまうケースもありえるため、契約前に損失の要素を含めたシミュレーションをすることが大切です。

投資初心者におすすめなのはリスクの低い投資

投資

ここでは、投資初心者におすすめのローリスク投資方法である「投資信託」「個人向け国債」「太陽光発電投資」について、それぞれの特徴を紹介します。

投資信託

投資信託とは、投資家から集めたお金を信託銀行など投資の専門家が運用し、利益を投資家に分配する金融商品です。少額から購入できるほか、専門家に運用を委託できるため損失リスクが低いなど、投資初心者でも安心して始められる点が投資信託のメリットといえます。

ただし、投資信託では元本が保証されないため、場合によっては損になるリスクもゼロではありません。損失リスクをできるだけ回避するためには、自分で信託会社の信頼性をチェックすることが重要です。

個人向け国債

安全な金融商品を購入したい人には個人向け国債が適しています。国債は満期まで保持すれば元本が保証されており、国が破綻しない限り、満期になると利子付きで償還されるしくみです。購入は1万円から可能で、いつでも自由に中途解約できます。

ただし、個人向け国債は安全性が高い反面、利回りは0.05%程度と、大きなリターンは期待できません。また、満期前に売却すると売却損が発生して元本割れする可能性がある点もデメリットです。

太陽光発電投資

太陽光発電投資は、長期的に安定した収益を得られるローリスクの投資方法です。発電所の設置と運用を外注すれば専門知識がなくても問題ないため、投資初心者にも始めやすい投資といえます。

安定した収益を得られる理由は、国が定めるFIT(固定価格買取)制度です。住宅用太陽光発電所は10年間、投資に使われる産業用太陽光発電所は20年間、一定の単価で国に電力を買い取ってもらえるため、容易に収益を見積もれます。

太陽光発電によるエネルギーは無限にあり、他の太陽光発電所の有無にかかわらず発電量は変わらないため、競合になる心配もありません。

株価変動に気を配る株式投資などとは異なり、太陽光発電投資では面倒なメンテナンスも業者に一任できるので、本業があって時間がない人にもおすすめです。

不動産投資は準備期間を取ってリスクを避けましょう

不動産投資

一部の人を除き、不動産を購入する機会というのはそこまで頻繁にあるものではありません。マイホームの購入経験くらいしかない人、あるいは生まれて初めて不動産の購入を検討することになったという人も多いのではないでしょうか。

不動産は高価な買い物であるため、不動産投資で失敗は許されません。場合によっては、破産してしまうリスクすらあります。普段やりなれない取引だからこそ、慎重な行動を心がけましょう。

業者を盲信して契約するのではなく、適切な投資物件かどうかを自分でも的確に判断できるようにしておく必要があります。そのためにも、丁寧な事前調査や勉強は不可欠です。

万が一、不動産投資詐欺にあってしまった場合、自分1人の力で事態の解決を図るのは難しいでしょう。騙されたと気づいた時点で、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

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