ソーラーシェアリングとは、農地を使って行う太陽光発電事業のことを言います。農林水産省では「営農型発電設備」と呼んでおり、この言葉からも分かるように農業を継続しながら発電を行う事が出来ます。ここではソーラーシェアリングの仕組み、収益や費用に関することを中心にお話します。

1.ソーラーシェアリングの収益性は実際どれくらいあるの?

実際にソーラーシェアリングを始めるには、野立ての太陽光発電設備と同じようなシステムを設置することになります。それに応じて設置費用がかかりますが、売電収入とのバランスはどうなるのでしょうか? ここではまず、どれくらいの期間で設備費用の元が取れて、将来的にどれくらいの収益が見込めるのかということについてお話をします。あくまでもモデルケースであるため、設置場所や設備内容によって収益性は異なります事をご了解下さい。

ソーラーシェアリングの設置費用は住宅向けよりも割高!

ソーラーシェアリングの設置費用について最初に知っておかなければいけないのは、一般的な住宅の屋根に付けるようなソーラーパネルよりも、ソーラーシェアリングの設備の方が割高になるということです。

元々建物が無い農地に太陽光パネルを設置するので、架台部分の費用が必要になるためです。

架台の設置に加えて、工事そのものも難度が上がるため、工事費も割高になります。住宅向けのソーラーパネル工事と同じように考えていると、大幅なズレが生じるので注意が必要です。

実際にソーラーシェアリングの収益性を計算

初期費用

およその平均的な太陽光発電の価格である20万円/kWを元に計算しますと、およそ1,500㎡の農地に50kWの太陽光発電を設置した場合では、50kW×20万円=1,000万円となり、初期費用は1,000万円かかることになります。

売電収入

毎月の売電収入には設備利用率を考慮する必要があるので、ここでは13%として計算しますと、
24h×365日÷12月×0.13=94.9h
50kW×94.9h×21円=99,645円
となり、月々の売電収入は約10万円になります

これを踏まえると、10年で初期投資額が回収出来ます。

20年間同じ条件で発電を行ったと考えると、1,400万円の収益を得ることが可能な計算になります。

こうして見ると、ソーラーシェアリングは戸建用や産業用と比べると利回りが劣ってしまいます。

ソーラーシェアリングは他の太陽光発電設備とは異なり、農作物の栽培と一緒に売電事業を行うことで、営農の継続をサポートしていくことを目標としています。

農地という一つの土地の上で、農業と売電事業という2つの事業を融合し、新しい付加価値を生み出すことがソーラーシェアリングの最も魅力的な点なのです。

2.ソーラーシェアリングが生む付加価値について

ソーラーシェアリングを設置することで、営農の効率化やソーラーシェアリングに必要な架台を利用した農作物の栽培も可能になります。ソーラーシェアリングは単に農地を利用した発電事業というだけでなく、農業面でも付加価値を出して多くのメリットを生む画期的なシステムなのです。

農作物の栽培と同時に効率よく発電ができる!

一般住宅向けや産業用の太陽光パネルがそうであるように、ソーラーシェアリングも太陽光パネルを設置する面積が広いほど多くの発電を行えます。

ソーラーシェアリングは、10㎡の面積で0.5kWの発電が行えると言われています。50kWの発電を行いたい場合は1,000㎡以上の面積が必要になるということです。

また、あくまでも農業を続けることをメインとした発電事業なので、栽培する作物の育成を妨げないことが大前提です。その為、育てている作物によって発電に必要な面積が異なります。

詳しくは後述しますが、太陽光パネルによって農地に出来る影の面積が33%程度であれば、ほとんどの作物の栽培に支障がないとされています。つまり、1,000㎡の農地にソーラーシェアリングを設置するとしたら、330㎡が太陽光パネルの面積になるということです。

https://www.tainavi-pp.com/investment/solar/83/

余剰分の太陽光をソーラーシェアリングに有効利用できる!

太陽光発電にはパネルが必要で、ソーラーシェアリングも例外ではありません。

そのため、太陽光パネルによって太陽の光が遮られて、作物の育成を阻害してしまうのではないか?と多くの人が考えます。
しかし、CHO研究所所長の長島彬氏の研究により作物の生育に影響がないことが実証されてきました。長島彬氏は「作物が成長する上で必要になる光合成の量は決まっており、必要以上の太陽光は光合成には利用されず、むしろ葉が変色するなどの悪影響を及ぼすこともある」という結論を出しました。

これは、「光飽和点」により作物の光合成に必要な太陽光の量には限界があるという考えが根拠になっています。太陽光を与えすぎてしまうと、むしろ葉が変色するなどの悪影響が出る可能性にも言及しています。

長島彬氏は「植物に与えすぎても無駄や害になってしまう太陽光を発電に活かす」というソーラーシェアリングの概念を説いたのです。

2003年に特許を出願し、2005年には無償で誰でもこの技術が使えるように公開されました。農林水産省が2013年にソーラーシェアリングの設置を許可した背景には、長島彬氏の研究成果が大きく関わっています。

https://www.tainavi-pp.com/investment/solar/105/

ソーラーシェアリングに適した作物ならむしろ品質が上がる!

ソーラーシェアリングをする上で知っておかなければいけないのは、「作物によって必要な光合成量が異なる」ということです。

作物が光合成に使用する太陽光の量には上限があり、それを超えた光を浴びても光合成は促進されません。その余剰になってしまう太陽光を活用することで、ソーラーシェアリングは成り立つのです。

では、実際にはどんな作物がソーラーシェエアリングに向いているのでしょうか?長島彬氏は、基本的には適切な遮光率、先ほど挙げた33%程度の太陽光パネルの設置であれば多くの作物が栽培できるとしています。

サツマイモやジャガイモといった芋類から、大豆や麦に蕎麦などの穀物類、ほうれん草や小松菜などの葉物類、ブルーベリーやぶどうといった果樹など適用する作物は幅広くあります。芋類などはソーラーシェアリングで収穫量が増えたり、葉物類は葉っぱが柔らかくなるといった事例もあるようです。

一方で、半日陰でもよく育つ、むしろ品質を上げることが出来るような作物もあり、そういった作物もソーラーシェエアリングに向いています。ニンニクやミョウガなどがそれにあたります。

また、太陽光パネルの設置量を増やして遮光率を上げ、ほとんど日があたらないようにしても育つのが、椎茸・キクラゲ・センリョウ・サカキなどで、これらの作物も実際にソーラーシェアリングで栽培されています。
これらの作物は日陰でも育つ、あるいは日陰で育てることが前提なので、過剰な太陽光を遮って作物の質を上げるというよりは、陰を作るための屋根を付ける代わりに太陽光パネルを取り付けるという感覚ですね。

また、意外なことに水稲でもソーラーシェアリングの事例が増えてきています。水稲と言えば、何も遮るものが無い水田で育っているイメージがありますが、そんな水稲でどうしてソーラーシェアリングができるのでしょうか?

その理由は、太陽光パネルの設置方法の工夫にあります。一般的な太陽光パネルは、ぎっしりと土地の面積いっぱいに設置されるイメージですが、ソーラーシェアリングではあくまでの農業がメインの発電です。

その為、水稲など日照が必要な作物は日照の確保を最優先とし、支柱の間隔も農業用機械が効率的に作業できるような間隔を取って、パネルにも大きな隙間を開け均等に光が作物にあたるような形での設置が行われます。

これによって作物も十分な量の太陽光を受けることができ、発電と作物の育成の両立が可能になるのです。

https://www.tainavi-pp.com/investment/wind/35/

3.ソーラーシェアリングをするには農地の区分により条件がある

農業を行うための土地のことを農地と言いますが、農地は幾つかの種類に分けられています。農地の区分によって、他の用途で利用しようとする場合の規制があるわけですが、ソーラーシェアリングはその規制を乗り越えることができる仕組みです。まずは、農地にどのような区分があるのか簡単に見てみましょう。

市街地にある農地、今後市街地になる可能性がある地域の農地など、生産性の低い農地のことを第3種農地・第2種農地と言います。この2つの農地は、他の用途で土地を利用するための「転用」許可が受けられるため、一般的な太陽光発電設備にも使われてきました。

一方で、生産性が高く営農に好条件な農地を第1種農地といい、更にその上には甲種農地という区分があります。これらの農地は農業を行うにあたって好条件であることなどから、農業の継続が強く推奨されているため、「転用」による太陽光発電の設置等は原則的に認められていません。

また、これらの農地の区分とは別に市町村が指定する「農用地区域」という土地があり、この指定を受けた農地も農業以外の用途に使うことが原則として認められていません。

この甲種・第1種農地や農用地区域の農地でも、ソーラーシェアリングという形であれば太陽光発電が可能になります。その条件をまとめると、以下のようになっています。

  • 太陽光発電設備の下で継続的に農業を行い、また周辺の営農にも支障を与えない
  • 農業用機械を使用した効率的な作業が出来る空間を確保する
  • 作物の収穫量や品質が大幅に低下しないようにする
  • 年に1度、農作物の生産に支障が無いことを確認して報告する

簡単に言ってしまえば「ソーラーシェアリングを始めてもきちんと今までと変わらない農業をすれば良い」ということです。

これによって、ほとんどの農地でソーラーシェアリングによる太陽光発電ができるようになり、農業を続けながら売電収入も得ることが出来るようになりました。

ただし、ソーラーシェアリングの設置許可は、農地の一時転用許可という形で行われるため、許可期間の3年間が過ぎると新たに許可を取り直す必要がある点には、注意が必要です。農業をしっかりとやっていなかったことで、許可の取り直しが認められない場合には発電設備の撤去を命じられる可能性があります。


このように、ソーラーシェアリングには農地で太陽光発電事業ができること、作物の生育にプラスになる部分があると同時に、農業をしっかりと続けられなければ事業をやめなければならないというリスクも抱えています。

大きな額の初期投資をして始める事業となるので、専門家のサポートを受けた長期の計画を立てて、万が一にも備えた上で始めることが大切です。

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