自然の風を電気に変える、風力発電。風力発電がどのような仕組みで電気を生み出すのか、 発電できる電力の量は?
ここでは、風力発電の基本について解説いたします。
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風力発電の仕組み
風力発電は、自然の風を利用して発電します。発電の仕組みがどうなっているか、画像を見ながら解説していきしょう。
風とは空気の流れのことです。風車で風を受けると、空気の流れにより羽が回転します。風力発電は風車(風力タービン)で風を受けて回転させ、その回転エネルギーを発電機に送って電気エネルギーに変換しているのです。
発電量には、風を受ける面積と風速などが関わります。風力でたくさん発電するには、以下の2つが重要になります。
- 風が強く吹く場所に設置しすること
- 風を効率よく受けられる大きな羽
最新機種では、風力発電は、風の運動エネルギーの最大30%〜40%を電気エネルギーに変換できます。再生エネルギーの中でも、風力は水力(最大80%)に続いて発電効率が高いエネルギーです。
風車の種類
風力発電に使う風車は多くの種類があります。大きく分けると、垂直軸と水平軸の2種類です。垂直軸は、風車の形状によってさらに揚力型と抗力型の2種類に分かれます。
垂直軸とは、風車の回転する部分(ロータ)を支持する軸が、地面に対して垂直になるタイプの風車です。水平軸は、地面に対して水平に置かれた軸でロータを支えます。
それらの違いと特徴を一覧で見てみましょう。
水平型 | 垂直型(揚力型) | 垂直型(抗力型) | |
---|---|---|---|
画像 | ※プロペラ型 |
※ジャイロミル型 |
※サボニウス型 |
特徴 | プロペラ型 ・発電用として一般的 ・強風時に風を受けにくい |
ジャイロミル型 ・低風速でも発電できる ・強風時も風を受けられる |
サボニウス型 ・弱風でも発電できる ・発電効率は良くない |
他の種類 | オランダ型 多翼型 |
ダリウス型 直線翼型 |
パドル式 ・弱風でも発電できる S字ロータ型 |
再生可能エネルギー投資(再エネ投資)や発電事業に使う風車は、水平軸のプロペラ型(3枚羽タイプ)が主流です。なぜなら風力発電が稼働する中で振動が起こりにくく、風を捉える効率が比較的高いというメリットがあるからです。
風車の構造
風力発電は、風車の形をした発電機を用います。風車の構造について、風力発電で最も普及しているプロペラ型(3枚ブレード)を例に見ていきましょう。
各パーツの名称と役割
ブレード:風を受ける部分です。羽とも呼ばれます。発電効率と経済性を高めるために、風を受ける面積やブレードの枚数が研究されています。最も一般的なプロペラ型は、3枚ブレードが主流です。
可変ピッチ機構:風速に応じて羽の傾きを調整し、風圧を調整します。風圧を調整と、発電効率が良くなります。風が強いときには羽を寝かせて風圧を弱めます。この制御方式はピッチ制御と呼ばれます。
増速機:発電機に伝達される、風車の回転速度を上げるために使います。陸上に設置する風力発電は増速機を使うのが一般的です。
発電機:風車で変換された回転エネルギーを、電気エネルギーに変換します。
方位制御機構:ヨー制御とも呼ばれます。風を正面で受けるために、風向きに合わせて水平面上で旋回します。プロペラ型のような水平軸風車で使われます。
風力発電の仕組みと密接に関わる長所と短所
風力発電は、発電の仕組みと密接に関わる長所と短所があります。
長所
- 再生可能エネルギーで比較すると発電効率が高い
- 昼夜を問わずに発電できる
- 温室効果ガスを出さずに発電できる
- エネルギー枯渇の心配がない
- 風が弱すぎると発電できない
- 風が強すぎても発電できない
- 発電量が安定しない
- 自然災害の影響を受けやすい
- 騒音や電波障害を起こす
短所
これらは、風力で発電するメリットや、デメリットとも言えます。発電の仕組みとセットで知っておきましょう。
風力発電は発電効率が高い
エネルギーを発電に使うと、電気になる過程でさまざまなロスが発生します。再生可能エネルギーの量と、生み出される電力の量は同じにはなりません。そこで、発電に使ったエネルギーのうち、電気になるのは何%かという、発電効率(変換効率)について知っておきましょう。
再生可能エネルギーにはいくつかの種類がありますが、エネルギーや発電方法の違いなどにより発電効率に差が生まれます。
再生可能エネルギーごとの発電効率(変換効率)を一覧で見てみましょう。
太陽光発電 | 最大20% (発電に使う太陽電池の素材により変換効率が異なります。) |
---|---|
風力発電 | 30%〜40% |
水力発電 | 最大80% |
バイオマス発電 | 20%〜31%(ガスエンジン4〜25kW) |
地熱 | 8% |
データ出典:データ出典:NEDO,新エネルギー大辞典
風力発電は、再生可能エネルギーの中で比較すると発電効率が高いエネルギーとされています。発電効率をさらに高めるために、風車の形を改良したり、ブレードの大きさや長さを調整するなどの研究が進められています。
風力発電特有の発電効率の高さをいかして、発電した電気を売電する投資に目を向けても良いでしょう。利回り、初期投資などの詳細については以下の記事を参考にしてください。
関連記事:風力発電投資は本当に儲かるのか? 利回りや初期費用回収までの期間
風は強すぎても弱すぎても発電できない
風力発電は、風車を回す風量が重要です。しかし、風量が多すぎても、少なすぎても、うまく発電できません。
風力発電で使われる風車は、発電に最低限必要な風量(カットイン風速)と、発電できる最大風量(カットアウト風速)が設定されています。風量がカットイン風速に満たない場合、発電に必要な回転エネルギーが得られません。
逆に、風量が多すぎてカットアウト風速を超えた場合、を保護するために風車が回りすぎないようにします。風車を止めるには、タービンにブレーキを掛けたり、ギアで回転数を抑えるなど、風車のメーカーにより様々な方法があります。
風車を止めれば発電も停止してしまいますが、風車が回りすぎれば故障の原因になってしまいます。風力発電機の修理はパーツの手配などに時間と費用がかかります。強風の中での発電を試みるより、発電を一時停止して故障リスクを抑える方が、メリットは大きいのです。
自然災害で厄介なのは「雷」
風力発電は落雷、台風、地震、津波などが懸念されます。特に頻度が高く、影響が大きいのは落雷です。過去に起こった風力発電の故障と事故について、日本風力発電協会が調査を行ないました。その結果、最も多かったのは落雷によるものだったのです。
風力発電は、発電効率を高めるためにタワー(支柱)を高く、ブレードを長く作る傾向にあります。上空で強く吹く風を狙うためです。大型の風力発電(3MWクラス)では、タワーの高さは基本的に60m〜80m、最大90mになります。地上60mは、マンションの20階ほどに相当します。
そして、障害物に風が当たって流れが乱れることを避けるために、開けた場所に設置します。すなわち、同時に落雷を受けやすい場所を意味するのです。落雷によって、発電機器が故障する、火災が発生するなどの影響が起こります。
周囲の環境に影響を及ぼすことも
風力発電は、近隣の環境に影響をもたらす可能性があります。風車の羽が回転するときに生じる音や振動について、周辺に住む住民だけでなく動植物にも配慮する必要があります。
風力発電で懸念される環境への影響
騒音 | ギアボックスや冷却ファンなどの機械音、 ブレードの回転にともなう風切り音があります。 |
---|---|
低周波音 | 聞こえ方に関する個人差が大きく。 夜間の発電中に発生する低周波音が睡眠に影響をもたらす可能性などがあります。 |
鳥類 | 風力発電による動物への影響として、風力発電機への鳥類の衝突問題が挙げられます。 |
景観 | 周囲の景観と調和が図られるよう、 配置やデザイン、色彩などを考慮することが望まれています。 |
電波障害 | 受信される電波が弱い場所では、電波障害が発生することもあります。 なお、地上デジタルテレビ放送への移行により、反射障害は発生しにくくなりました。 |
シャドーフリッカー | 晴天時にブレードが回転した影が、地上部に明暗を生じさせる現象です。 住宅がシャドーフリッカーの範囲内にあるときに、住民が不快感を覚えることが懸念されます。 設置する風力発電機の数が増えたり、一台の発電機が大きくなるほど、それぞれがもたらす影響は大きくなります。 そこで、出力が1,000kWを超える風力発電を建てるときには、周辺環境への影響を調査することが定められています。 近隣に住んでいる人たちから意見を聞きながら、風力発電システムは設置されています。 |
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