FIT制度(固定価格買取制度)は、再生可能エネルギーの普及を目的とした制度です。事業用太陽光発電や風力発電などがFITの認定を受けると、20年間同じ価格で発電した電気を買い取ってもらえるというメリットがあります。
しかし、FIT認定を維持するためには、発電設備の設置や運転にかかった費用の定期報告が必要なことを知っているだろうか。提出を怠ると指導対象となるだけでなく、せっかく取得した認定が取り消し処分にもなり得る重大な問題なのです。
これがややこしいのは、発電設備の規模や運転状況によって必要な報告が異なることです。2018年7月には、廃棄費用も報告義務化されました。
誰が、なにを、どのように報告すればよいのでしょうか。この記事では、FITの定期報告について詳しくご紹介していきましょう。
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FITの定期報告について
FIT制度の認定を受けた発電事業者は、「設置費用報告」「運転費用報告」「増設費用報告」の3つについて、経済産業大臣に報告しなければなりません。定期報告はFITのポータルサイトからWebを通じて行うことも可能です。
ただし、太陽光発電の設置状況によって、義務づけられる報告内容が異なります。
まず、誰が、どの報告義務を負っているかを整理しましょう。
設備の設置状況 | 設置費用報告 | 増設費用報告 | 運転費用報告 |
---|---|---|---|
10kW未満 (J-PEC補助金あり) |
不要 | 増設後も10kW未満なら不要 | 経産大臣が求める場合にのみ必要 |
10kW未満 (J-PEC補助金なし) |
必要 | 増設後も10kW未満なら不要 | 経産大臣が求める場合にのみ必要 |
10kW以上 | 必要 | 必要 | 必要 |
10kW未満の太陽光発電を設置した場合
設置費用の報告を、発電開始から1ヶ月以内にしなければなりません。
年1回の運転費用報告については、経済産業大臣から求められた場合にのみ提出が必要になります。
増設費用報告は、太陽光パネルやパワーコンディショナーを増やし、出力を増した場合に必要な報告です。増設で10kW以上にならなければ提出義務はありません。提出期限は、増設した日から1カ月以内です。
10kW以上の太陽光発電を設置した場合
設置費用報告は、発電を開始した日から1カ月以内に提出しなければなりません。運転費用報告については、発電を開始した月の翌月末までに毎年1回提出することが義務付けられています。
増設費用報告は、増加した出力で運転開始した日から1カ月以内に提出する必要があります。
2012年6月末までに設置した太陽光発電は例外
例外として、特例太陽光発電設備(2012年6月30日までに太陽光発電の余剰電力買取を申し込み、固定価格買取制度に移行した発電設備。設備IDが「F」からはじまるもの。)は、設置費用・運転費用の報告は不要です。
設置費用報告の詳細・必要な書類
太陽光発電設備の設置にかかった費用を経済産業省に報告するための書類が、設置費用報告書です。
設備費や工事費、整地費用など、太陽光発電を設置するためには、さまざまな費用が必要になります。このような費用を定められた様式にしたがって報告するのが、設置費用報告書です。
報告する項目は細かく分けられており、太陽光パネル、パワーコンディショナ、モニターシステム、架台、廃棄想定費用などについて、それぞれ報告しなければなりません。
また、野立ての太陽光発電には、第三者が簡単に入ることができないように柵や塀、標識の設置が義務付けられています。この設置状況についての報告も必要です。
すべてを太陽光発電設置業者にまかせている場合は、設置業者の明細書で把握できます。部材と工事業者を分けて依頼しているような場合は、それぞれの業者の明細書を確認する必要があります。
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設置費用報告書の対象者と提出期限
FIT認定を受けた太陽光発電の設置にかかった費用を報告します。住宅用・産業用を問わず、太陽光発電を設置してFITで売電する全ての人が対象です。報告期限は、発電設備が運転を始めた日から1ヶ月以内と、やや短いです。施工店に報告を手伝ってもらうのが一般的です。
事業計画認定で設置者として登録されている人は、設置費用報告書を提出しなければなりません。ただし、「発電設備が10kW未満」と「J-PECの補助金を受けている」の2つの条件を満たしている場合は、報告の必要がありません。
補助金というと都道府県や市町村の補助金と混同しがちですが、対象となるのは国の補助金であるJ-PECの補助金のみなので注意が必要です。
設置費用報告書の提出期限は、発電を開始してから1カ月以内です。たとえば、2018年10月10日に発電を開始した場合は、2018年11月10日が提出期限となります。
設置費用報告書の提出が必要なのはこの1回のみで、運転費用報告書のように毎年提出する必要はありません。また、運転費用報告を行う前提として、設置費用報告書が提出されていなければならないので注意が必要です。
運転費用報告書(追加あり)の詳細・必要な書類
太陽光発電設備を運転する際には、土地の賃貸料や固定資産税、メンテナンス費、保険料などさまざまなランニングコストがかかってきます。
これを経済産業省へ報告するための書類が運転費用報告書です。報告する様式は定められており、土地貸借料、修繕費、保守点検費、事務所経費、人件費、通信費、法人事業税、廃棄想定費用などの項目についてそれぞれ報告しなければなりません。
さらに、2018年7月23日より撤去や処分に係る廃棄費用についても報告が義務付けられました。廃棄費用の項目には、撤去時に必要となる費用として積み立てた毎月の金額と累計積立金額を記入します。
太陽光発電の設備は年々増えており、30年程度で寿命を迎える太陽光パネルは将来廃棄物になってしまう。そのため、廃棄の進捗状況を確認するために廃棄費用についての報告が義務化されたのです。
運転費用報告書提出の対象者と提出期限
事業計画認定で設置者として登録されている人は、運転費用報告書を提出しなければなりません。ただし、発電設備が10kW未満の場合には原則として報告する義務はありません。
最初の運転費用報告の提出期間は、運転を開始した翌年の運転開始月から翌月末です。たとえば、2018年10月10日に運転を開始した場合は、2019年の10月1日から11月30日の間に運転費用報告書を提出しなければなりません。
運転費用報告書は毎年1回、この期間に提出することが必要なので、注意が必要です。
また、2018年8月31日付で、定期報告を提出していない設置者の一部に対して資源エネルギー庁より「定期報告に関する指導について」という文書が送られました。これには、9月20日までに定期報告されない場合、認定取り消しとなる可能性がある旨が記載されています。
今後、設置費用報告書を提出していない設置者への指導が厳格になることも予想されるので、期限内に提出することが重要です。
増設費用報告書の詳細・必要な書類
太陽光発電設備を増設した際には、新規に設置した場合と同様にその増設にかかった設備費や工事費、整地費用などの費用を経済産業省に報告しなければなりません。そのための書類が増設費用報告書です。
報告する項目は設置費用報告と同様で、太陽光パネル、パワーコンディショナ、モニターシステム、架台、工事費、土地造成費などについて、それぞれ報告しなければなりません。
また、太陽光パネルやパワーコンディショナについて報告する際には、金額以外にメーカー名や型番、出力なども記入しなければなりません。業者の見積書や明細書などの資料を手元に用意してから、記入するのがよいでしょう。
増設費用報告書提出の対象者と提出期限
増設費用報告書提出の対象者となるのは、発電設備を増設した設置者です。ただし、増設後も10kW未満であれば原則として報告する必要はなく、経済産業大臣から求められた場合のみ報告が必要です。
増設費用報告書の提出期限は、増設した部分が発電を開始してから1カ月以内です。たとえば、増設部分が2018年10月10日より発電を開始した場合は、同年の11月10日が提出期限となります。
増設費用報告書の提出が必要なのは発電設備を増設した場合のみで、それ以外は提出する必要はありません。増設費用報告書を提出していないと、その後の運転費用報告と整合性がとれなくなるので注意が必要です。
FITの定期報告は期限内に行おう
FITは発電事業者にとって、とてもメリットのある制度です。このメリットを享受しつづけるためには、認定が取り消されることのないよう、定められた報告をきちんとすることが大切です。
定期報告を怠れば、ペナルティもあり得ます。2018年8月には、期限までに報告が確認されなかった事業者の一部に対して、経済産業大臣による指導がおこなわれました。今後も、定期報告を提出していない設置者に対しては、厳格な対応が取られると予想されます。
発電設備の設置者は、必ず報告書の提出を行わなければなりません。FIT制度のメリットを享受しつづけるためにも、定められた期限内に定期報告を済ませましょう。
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