ソーラーシェアリングの仕組みとは?制度と手続きを徹底解説の説明画像その1

再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT)が導入されてから、国内には太陽光発電設備が急速に普及してきています。太陽光バブルとも言われるブームの裏で、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)と呼ばれる一風変わった太陽光発電設備が増えてきました。

ただ、増えてきたといっても通常の野建ての太陽光発電と比較すると、ほとんど増えていません。そこには、増やしたくても増やせないある規制が障壁となっていました。ただ、2021年はその規制が緩和され、低圧の太陽光発電システムとしては唯一20年間の全量売電単価が設定されるなど、投資家にとっても再注目の投資商品となりつつあります。

日本の荒廃農地(耕作を放棄により、実質農業できない土地の事)に太陽光発電を設置すれば、日本の電力問題を解決するとまでいわれてるぐらい、ソーラーシェアリングには可能性があります。

なぜか?そもそも農地は作物を育てる為の地目であり、日照条件が抜群に良い場所だからです。耕作放棄地は年々増加しており、社会問題化しつつあり、ソーラーシェアリングで農業+発電所として生まれ変わる事ができれば、1石2鳥です!

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ソーラーシェアリングとは?

ソーラーシェアリング

ソーラーシェアリングとは、簡単に言うと田んぼや畑などの農地で農業と太陽光発電事業を両立させる仕組みです。2013年3月に農林水産省が「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」という、一つの通達を出しました。

この「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備」がソーラーシェアリングです。

ソーラーシェアリングは、農地を雑種地などに転用して野立ての太陽光発電設備を建設するのではなく、農地のままで、農業を行える空間を確保した支柱の上に太陽光パネルを設置するという、今までにない新しい仕組みです。

ソーラーシェアリングといっても、どんな作物が作られているのでしょうか?

ソーラ―シェアリング向けの作物とは?

ソーラ―シェアリング向けの作物

ソーラーシェアリングを検討している人にとっては、太陽光の発電量も気になるかと思いますが、 その大半は作物が育つのか?どんな作物が適しているのか?実際の実績が気になりますね。

太陽光パネルが上部に設置されている環境下で日射が少なくても、本当に育つ作物を選択する必要性が ありますが、そもそも植物には以下の3種類に分けられます。

  • (1)陽性植物・・・日射が良い場所で生育する植物
  • (2)半陰性植物・・(1)・(2)の中間で生育する植物
  • (3)陰性植物・・・日陰の場所でよく生育する植物

ソーラーシェアリングをする場合は、日射が通常よりも良くないので、適した作物は半陰性・陰性植物になりますね。 実際どういったものがソーラーシェアリングで収穫されているのでしょうか? 農林水産省の公表している情報では、以下となっております。

  • 土地利用作物(9%)・・米、麦、大豆、そば
  • 野菜類(37%)・・小松菜、ネギ、カボチャ、いも、どくだみ等
  • 果樹(11%)・・ブルーべり、ブドウ、柿等
  • 観賞用植物(29%)・・さかき、しきみ等
  • その他(13%)・・しいたけ、きくらげ、茶等

観賞用植物が多いのは、味等が関係しないからと推測しますが、意外に果物が入っているのは意外でしたね。

ソーラーシェアリング向けの用地とは?

ソーラーシェアリング向けの用地

実際に、日本の野建て太陽光発電所の中には農地を転用して農地ではない地目に変更して、太陽光発電所が設置できるようにして増え続けましたが、ある条件を満たした農地はそもそも耕作放棄地であっても農地転用の許可が得る事は困難とされてきました。

(1)農用地区域内用地 ・・・※農業振興地域

※市町村の農業振興地域整備計画内で「農用地区域」とされている区域ににある農地

(2)甲種農地

※市街化調整区域内の土地改良事業が8年以内に施された農地

(3)第1種農地

※農地には3種・2種・1種があり、面積がある一定の大きさや極めて生産力ある場合は農地1種とされております。

日本にはこのように農地に適した土地がたくさんあります。農地転用してしまえば、農地はどんどんなくなります。ただ、農業もしていない、太陽光発電も設置できない、これを見事に融合したソーラーシェアリングが希望なのです。その仕組みは?

ソーラーシェアリングの仕組みとは?

ソーラーシェアリングの仕組みの根幹を成しているのが、「農地の一時転用」という取り扱いです。農地の用途を変更するためには農地転用という手続きを取り、例えばアパートや駐車場を建設します。この場合、農地転用された土地は農地ではなく宅地や雑種地といった扱いになり、土地の「地目」が変わります。また、その転用の効力に期限はありません。

一方で、ソーラーシェアリングのための一時転用の場合には土地そのものは農地のままの扱いとなり、太陽光発電設備の支柱などが設置されている部分だけ、一時的な転用を行うという特別な扱いになります。

そのため、ソーラーシェアリングでは支柱以外の部分でしっかりと農業を行っていくことになります。支柱を立てて太陽光発電設備をその上に設置しても、それは土地の一部だけで、しかも一時的なものという扱いなので「地目」も農地のままです。

農地

ただし、その転用が認められる期間には限りがあり、ソーラーシェアリングの場合には3年間となっていました。そして、例えばFITが適用される20年という期間の発電事業を行っていくには、3年毎に一時転用許可を再取得することを繰り返すという形になりました。

このように3年間という期限付きではありますが、一時的な転用であるという特別な扱いのため、通常は農業以外の用途とすることが認められない農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地でもソーラーシェアリングは理論上は設置可能となりました。

ただ、一方で20年間の売電事業を行うのに1千万以上の投資を行い、3年毎に一時的な転用を再取得すること自体が業界では大きな障壁となっていました。もし、1次転用を認められなければ投資は終了となり大きなリスクでもありました・・

ソーラーシェアリングの1次転用期間が3年から10年に!

ソーラーシェアリング業界に1つの希望が生まれたのは、2018年の5月でした。農林水産省より、1部の条件を満たす場合は1次転用期間を10年に変更すると発表されました。その条件とは?

  • 荒廃農地を再生する場合
  • 農地2種・3種を利用する場合
  • 担い手が自ら所有する農地の場合

正直、3年から10年になることで金融機関からの信頼が回復して融資も受けやすくなりますよね。

ソーラーシェアリングの売電単価は?

売電単価

2020年からは一般的に土地に太陽光発電を設置して20年間売電できる条件が大きく変わりました。低圧(50kw未満)と呼ばれる野建て太陽光発電については、ソーラーシェアリング以外は売電できなくなりました。

2023年の売電単価も発表されておりますが、引き続きソーラーシェアリングだけが売電が認めれております。その売電単価は?

【容量別の2023年の売電価格】

10kW以上~50kw未満
※ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)
10円/kWh
10kW以上~50kW未満
※事業用の自家消費型タイプ
10円/kWh
50kW以上~250kW未満
※全量売電タイプ
9.5円/kWh

2020年以降は太陽光投資案件として低圧の野建て太陽光発電の新規案件組成ができなくなり、多くの販売店は農地を活用したソーラーシェアリング案件を投資案件として開発準備中であり、経済産業省の事業認定もソーラーシェアリング案件がかなり多くなっています。

ソーラーシェアリングの新規設置許可認定数は伸びてる?

設置許可

営農型太陽光発電は過去数年注目を浴び続けているが、実際にどれぐらいの伸びで増えているのか?2013年度は約100件程度の新規認定でスタートしてからは、年間300件~400件程度は増え続けておりましたが、2019年度は農地転用の期間延長(3年から10年に変更)もあり、年間700件程度にまで増えました。

新規FIT申請が全体で減少する中では、大きな伸びとなりました。2022年度・2023年度はもっと飛躍的に伸びると予想されます。その大きな理由は?

2021年に更なる規制緩和でハードル下がる!8割以上の単収要件を撤廃!

お得

ソーラーシェアリングの一番大きなハードルとして、ソーラーシェアリングを行ったときに周辺の周辺の平均水準と比べ8割以上の単収を確保しなければなりませんでした。つまり、収穫量が周りと比較して8割以上は維持しないといけませんでした。もし、これよりも下回る場合は売電ができなくなります。ただ、2021年に荒廃農地に限り、この要件が撤廃されました。

荒廃農地を再生利用する場合は、おおむね8割以上の単収を確保する要件は課さず、農地が適正かつ効率的に利用されているか否かによって判断する」とした。加えて、「一時転用期間(10年以内)が満了する際、営農に支障が生じていない限り、再許可による期間更新がなされる仕組みであることを周知する」

2023年度ソーラーシェアリングの設置条件のまとめ

まとめ

ソーラーシェアリングは農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地でも設置が可能ということで、一見すると太陽光発電事業の幅を大きく広げる仕組みのように見えます。しかし、どんな設備や形態であっても太陽光発電設備の設置を認めるというわけではなく、一時転用許可を受けるには多くの条件が設けられています。主な条件を下記にまとめました。

農林水産省からの指針概要

  • 簡易な構造で容易に撤去できる支柱であること
  • 一時転用許可を得る面積が必要最小限で適正と認められること
  • 発電設備の下の農地で適切な営農が確実に継続されること
  • 農作物の生育に適した日照量を保つための設計となっていること
  • 支柱の高さが最低2m以上で、支柱の間隔を含めて効率的な農業機械等の利用が可能となっていること
  • 周辺の農地の効率的な利用などに支障を及ぼさないこと
  • 設備を撤去するのに必要な資金や信用があること
  • 発電設備を電力系統に連系する場合は、電気事業者との契約を締結する見込みがあること
ソーラーシェアリング

更に、ソーラーシェアリングでは「営農の適切な継続」が必須条件とされますが、農林水産省の通達では、下記の条件に当てはまった場合には営農の適切な継続が確保されていないと判断されるとしています。

  • 営農が行われていない
  • 発電設備の下の農地における作物の単収が、同じ年の地域の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減少している ※但し、荒廃農地の場合はこの要件は適用されない
  • 発電設備の下の農地で生産された農作物の品質に、著しい劣化が生じている
  • 農作業に必要な農業機械等を効率的に利用することが困難

また、その他の注釈として

  • 設備の設置に際しては農閑期に行うことが望ましい
  • 設備の設置を契機として農業収入が減少するような作物転換等をすることがないようにすることが望ましい

といった条件も付されているのです。
とにかく「農業のための自然エネルギー発電事業」という方針が一貫していますから、ソーラーシェアリングの実施にあたってはここに挙げた条件を遵守していく必要があります。

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の設計・施工ガイドライン

ガイドライン

2021年11月になり、営農型太陽光発電の施工・設計に関するガイドライン(2021年版)がNEDOより発表されました。今回の発表内容には、ソーラーシェアリングだけでなく、傾斜地への設置や湖・池などの水上設置を含む特殊な設置場所への施工・設計ガイドラインとなります。

通常の野建て設置タイプとソーラーシェアリングの大きな違いは、ソーラーパネルの下で農業を営む点となります。 当然ガイドラインには、電気設備内で安全に農業を安全に従事できるのか?また農業を行う上での侵入ルートや走行ルートが確保されているのか? 当たり前の事ですが、しっかり農業が安全に出来る前提で設計・施工がされるのかガイドラインとなっております。

また、ソーラーシェアリングは通常の野建てより太陽光パネルの高さが高いのも特徴ですので、その点の強度計算もしっかり記載されています。

今後、ソーラーシェアリングを行う方は必ずその設計・施工ガイドラインになっているか、販売施工店に確認しましょう。

ソーラーシェアリングの設計・施工ガイドライン「営農型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン2021 年版」を参照してください。

申請時の手続きと必要な書類

手続き

上に挙げたような条件を遵守した上で、一時転用許可の申請にはどのような手続きが必要になるのでしょうか?

一時転用許可の申請は、事業を計画する市町村の農業委員会に対して行います。農地転用手続きの一環ということになり、申請に必要な様式は各農業委員会が定めたものがありますが、ソーラーシェアリングの設置に際しては通常の農地転用許可に必要な書類に加えて下記の書類の添付が必要とされています。

  • ソーラーシェアリングの設備設計図
  • 発電設備の下の農地における営農計画書
  • 営農型発電設備の設置による下部の農地における営農への影響の見込み及びその根拠となる関連データ、必要な知見を有する者の意見書又は先行して営農型発電設備の設置に取り組んでいる者の事例
  • ソーラーシェアリングの発電事業者と、下の農地で営農する者が異なる場合には、支柱を含む営農型発電設備の撤去について、その費用の負担について合意されていることを証する書面

特に3番目の書類は一般的に「営農意見書」と呼ばれ、計画している設備の太陽光パネルのレイアウトや架台の高さ、下で栽培を計画している農作物の種類に応じて、問題なく営農が行えることを第三者による確認を受けた書面が必要です。

相談

この第三者は、農業普及指導員や農業試験場・大学の研究者などが該当するほか、ソーラーシェアリング設備の製造事業者や先行してソーラーシェアリングに取り組んでいる方でも可とされています。ただし、この基準については都道府県や市町村農業委員会によって判断が大きく異なるので注意が必要です。

これらの書類を整えた上で、自分の土地でソーラーシェアリングを行う場合には農地法第4条許可、他人の土地の上で行う場合には農地法第5条許可(と必要に応じて第3条許可)の申請を行います。こちらは、各市町村農業委員会に申請様式がありますので、それに則って申請書類を作成します。

ここで注意すべき点として、ソーラーシェアリングを含めて農地法に基づく農地の転用許可を受ける場合には、転用して行う事業に必要な資金を確保していることを証明する必要があります。自己資金でソーラーシェアリングを設置する場合には、金融機関の残高証明書など、融資を受ける場合には融資内定証明書などです。

ソーラーシェアリングの融資については、「失敗しないソーラーシェアリングのファイナス実例とは??」を参照してください。

https://www.tainavi-pp.com/investment/solar/83/

毎年の手続き

手続き

ソーラーシェアリングを設置した後は、その年に収穫した農作物の状況について翌年の2月末までに許可権者(一般的には都道府県知事)に対して報告をする必要があります。一般的に「営農報告」と呼ばれていますが、特に一時転用許可を得てから3年目の報告は、再度の一時転用許可申請の判断材料となるので重要視されます。

なお、この報告は収穫量や売上を記載して行いますが、果樹など単年で収穫が得られない作物については、その生育状況を報告することになります。

一時転用の許可延長が3年から10年

中段でもお伝えしましたが、営農型太陽光発電である条件を満たす場合は『3年以内』の農地転用許可が『10年以内』となります。 その条件は当然、3年以内の条件をすべて満たす事が前提となり、以下のいずれかを満たす必要があります。

  • 農地が荒廃農地であり再生利用する場合
  • 農地が第2種農地もしくは、第3種農地を利用する場合
  • 担い手が自ら所有する農地を利用する場合や賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する農地等を利用する場合
https://www.tainavi-pp.com/investment/solar/105/

農業委員会によって異なる対応

ここまで、農林水産省による通達をベースとして制度を解説してきましたが、農地の転用許可は都道府県及び市町村が行う手続きなので、各地域でローカルルールのようなものが存在する場合があります。

一定の発電設備の形態や遮光率でないと認めないとしていたり、耕作放棄地の場合はまず1年間耕作をしてからでないと一時転用許可を得られなかったりとその内容は多岐に亘るので、まずは事業を計画する市町村の農業委員会に必ず問い合わせるようにしてください。

https://www.tainavi-pp.com/investment/wind/35/

ソーラーシェアリングはこれから急成長!

ソーラーシェアリング

これまで農家が減り、農地が減り、収穫が減り、国の自給率がどんどん減り、ソーラーシェアリングも伸び悩んでいました。ただ、農地の一時転用期間が3年から10年に変わり、単収要件8割以上の撤廃などの大きな障壁がなくなりました。

これからは、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)により、荒廃農地の復活や農業への新規参入や地方の活性化・売電事業により農業収益の安定化することで、日本の社会問題が解決できる事を期待しております。

当然、タイナビ発電所に掲載されている投資物件にもソーラーシェアリング物件が増えてきました!皆さんの持つ発電所が電気だけでなく、作物も生みとしたら、素晴らしい事ではないでしょうか?唯一野建て低圧太陽光発電でFIT価格があるのが、ソーラーシェアリング!今後のソーラーシェアリングに大注目です!

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